8月26日水曜日、イランがオマーンとの協議を再開したことで、金融市場では小幅ながら選別的な「リスクオン」の動きが広がった。投資家は、ホルムズ海峡をめぐる供給混乱が長期化する可能性をやや低く見積もり、原油価格は下落。エネルギー価格発のインフレ懸念もいったん和らいだ。新興国資産には追い風となったが、海峡を通る船舶の通常運航が回復したわけではなく、全面的な安心感には程遠い。
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再開期待で原油の「地政学的プレミアム」が後退
ブレント原油先物は前日の下落に続き、3%超下げて一時約85.81ドルとなった。26日早朝の時点でも約2%安で、ブレントは86.80ドル、米国産WTIは80.87ドル付近で推移した。
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この値動きは、トレーダーが原油価格に上乗せしていた地政学的リスクの一部を取り除いたことを示す。商船が安全に通過できる現実的な道筋が見えれば、追加的な供給途絶への警戒は弱まる。原油安はエネルギーコストを通じた短期的なインフレ圧力も抑え、債券利回りの低下を通じて、リスク資産により前向きな雰囲気をもたらした。
もっとも、市場が反応したのは「アクセスが改善する可能性」であって、航路の再開が確認されたからではない。これまでの提案も安全な航行を保証するものではなく、イランは通航再開に条件を付けていた。
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新興国通貨とアジア株は選別的に上昇
改善が目立ったのは、特に新興アジアの市場だった。
- MSCI新興国通貨指数は0.07%上昇。
- 原油価格の影響を受けやすいアジア通貨は底堅く、韓国ウォンは11カ月ぶりの高値圏を維持した。
- 韓国のKOSPIは1.69%高の6,856.44。半導体メーカーの自社株買いに関するニュースや、米半導体大手エヌビディアの決算を前にしたポジション調整に加え、原油安への安心感も支援材料となった。
- タイでは、タイ中央銀行が政策金利を**1.00%**に据え置いた後も、バーツと株式市場は堅調だった。
ただし、アジア株の上昇をイラン・オマーン外交だけで説明することはできない。半導体を中心とするテクノロジー株の強さや、エヌビディア決算への期待も重要な要因だった。世界全体の反応はより慎重で、米国の予想を上回るインフレ指標を消化しながらエヌビディアの決算を待つなか、MSCI世界株価指数はほぼ横ばいにとどまった。
インフレ見通しは改善したが、効果は限定的
原油安は、燃料や輸送費の低下につながりやすいため、エネルギーを輸入する国にとっては追い風だ。また、エネルギー価格の急騰が幅広いインフレ期待へ波及する当面のリスクを抑え、中央銀行が供給要因だけを理由に金融引き締めを強める必要性を和らげる可能性もある。
しかし、その安心感は限定的だった。根強い米国インフレを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げする可能性への見方はすでに強まっていた。米インフレ指標の上振れやFRBのタカ派的な発言でドル高が進めば、新興国通貨や金融環境に再び圧力がかかる。原油安はインフレ見通しを改善したものの、米国のマクロ経済シグナルを打ち消すほどではなかった。
原油安は湾岸市場には逆風
原油輸入国やリスク感応度の高いアジア市場を支えた原油安は、湾岸諸国の株式市場にとっては重荷になり得る。ブレント原油は湾岸の金融市場を動かす重要な材料であり、価格下落は外交面での安心感が得られた一方、地域企業の収益見通しへの支援を弱めた。26日の湾岸株式市場はまちまちの展開となった。
この違いが、今回の動きを世界的な全面高ではなく、選別的なリスクオンと呼ぶ理由だ。原油を消費する国は投入コストの低下から恩恵を受ける一方、原油関連市場では収入見通しが悪化する可能性がある。
反発が崩れる可能性を示す現場の現実
海峡をめぐる状況は依然として危険で、通常運航からはほど遠い。海峡は大部分が閉鎖された状態にあり、オマーン沖ではタンカーが攻撃を受けて航行不能となった。また、報道によれば月曜日に海峡を通過したタンカーはわずか2隻で、5月初旬以降で最も少ない1日当たりの通航数となった。
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イランが紛争を終わらせたいと表明したこと自体は前向きな材料だが、制裁と米国・イラン間の未解決の要求を踏まえると、報復や混乱の再燃というシナリオは残る。これまでの協議も、無条件に安全な通航を保証するものではなく、条件や警告を伴っていた。
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市場には主に2つのリスクがある。第1に、外交協議が行き詰まれば、原油価格に再びリスクプレミアムが上乗せされる可能性がある。第2に、原油が安値を維持しても、米国のインフレ指標が強く出たり、FRBがタカ派姿勢を示したりすれば、ドル高と世界的な金融環境の引き締まりが進み、新興国の通貨や株式への支援効果が限られる可能性がある。
市場の判断は「最悪の確率が低下」、解決ではない
26日の値動きは、戦略的な海上輸送リスクを市場がいかに素早く再評価するかを示した。ブレントが86ドルを割り込み、新興国通貨が小幅に上昇し、KOSPIやタイ資産が堅調だったのは、ホルムズ海峡の長期封鎖への懸念が後退したためだ。
ただし、投資家が織り込んだのは解決済みの情勢ではない。原油に含まれる地政学的プレミアムが持続的に低下するには、少なくとも3つの条件が必要になる。信頼できるイラン・オマーン間の取り決め、商船が安全に通航できることの確認、そしてタンカー輸送の継続的な回復だ。
これらが確認されるまでは、今回の反発は外交の後退だけでなく、米国のインフレや金利見通しの変化によっても揺り戻される可能性が高い。