ウクライナの長距離ドローンが、8月25日夜から26日未明にかけて、ロシア南西部タンボフ州コトフスクにあるWildberriesの物流センターを攻撃した。火災は施設全体に広がり、タンボフ州のエフゲニー・ペルビショフ知事は建物が完全に焼失したと発表した。19歳の男性が脳しんとう、49歳の女性が指の骨折を負い、2人が負傷したという。14
ロシア最大のオンライン小売企業の一つであるWildberriesは攻撃を確認し、現場を避難させた。施設では新たな荷物の受け入れを停止している。コトフスクの拠点が攻撃されるのは、7月18日に続いて2回目で、わずか約5週間の間隔だった。1314
コトフスクで何が起きたのか
ペルビショフ知事によると、物流センターを狙って計19機のドローンが飛来した。ロシア側はこのうち16機を防空部隊が迎撃し、3機が建物に到達して火災を引き起こしたと説明している。最終的に、施設は完全に破壊されたとされた。14
今回の人的被害は、同じ拠点が最初に攻撃された際より大幅に少なかった。7月18日の攻撃では、ロシア当局の発表でコトフスクの倉庫にいた7人が死亡し、25人が負傷した。モスクワ州エレクトロスタリの別のWildberries施設でも、同じ攻撃の波で死傷者が出ていた。7
今回は火災が本格化する前に従業員を避難させたことが、被害の抑制につながったとみられる。一方で、施設そのものが失われたことで、Wildberriesの保管・配送ネットワークから大規模な拠点が一つ消えることになった。
なぜWildberriesが繰り返し狙われているのか
コトフスクへの再攻撃は、ロシア最大のオンライン小売企業Wildberriesに対する継続的な攻撃の一環だ。ウクライナ側は、同社の一部物流センターがドローン製造用の部品や航法機器の供給に関わっていたと主張し、攻撃をロシアの軍事関連インフラを標的にした作戦の一部と位置づけている。ただし、これらはウクライナ政府の主張であり、今回の incident reports(事件報告)から独立して確認された事実ではない。716
企業活動への影響は大きい。Reutersは、7月18日以降の3週間足らずでWildberriesの少なくとも20拠点が攻撃され、火災によって在庫が焼失し、全国規模の配送網が混乱したと報じた。衛星画像の分析では、損傷または破壊された倉庫面積は約118万平方メートルに上り、同社の保管能力の5分の1を超えると推計されている。3
8月2日にはサマラ州のWildberries倉庫も攻撃を受けたと報じられたほか、同時期にはロシア各地の複数施設で火災や損傷が報告された。45影響を受けているのは大手小売企業だけではない。Wildberriesの物流・発送システムに依存する出店者や中小事業者も、在庫の喪失や配送の遅延に直面することになる。
商業物流を巻き込むウクライナの長距離攻撃
一連の攻撃は、ウクライナがロシア深部の物流施設、工業施設、製油所などに対する長距離ドローン作戦を拡大していることを示している。重要拠点が国土の広い範囲に分散するなか、ロシアは軍事施設だけでなく、商業倉庫やエネルギー関連施設にも防空を割かなければならなくなっている。
ただし、ロシアの燃料不足や商業活動の混乱を、Wildberriesへの攻撃だけで説明することはできない。Reutersは、製油所への攻撃が燃料供給への圧力やガソリン不足につながったと報じている。また同時に、ウクライナ側の防空体制も迎撃ミサイルなどの不足に直面していた。
より確実に言えるのは、攻撃の対象が後方の軍事施設から民間の物流・経済インフラにまで広がることで、ロシアが守るべき拠点の範囲が拡大しているという点だ。Wildberriesの倉庫は、消費者向けサービスを支える商業施設であると同時に、戦時下のロシア経済と物流の脆弱性を象徴する場所になっている。
プーチン大統領の新政令との関係
コトフスクの倉庫が破壊されたのは、プーチン大統領が8月24日に新たな政令へ署名してからわずか2日後だった。政令は、所有者が重要インフラを十分に防護できていない、または攻撃後に迅速に機能を回復できないと当局が判断した場合、ロシア政府がその施設を一時的に管理できるようにするものだ。1718
対象には、燃料・エネルギー、製造業、通信、公共サービス、輸送、物流などの分野が含まれる。政令上は、連邦国家財産管理庁などの一時管理者が企業の資産や施設を管理し、所有者に代わって安全対策や操業継続に関する権限を行使できるとされている。一方で、その管理期間に明確な上限は設けられていないと報じられている。18
ロシアのデニス・マントゥロフ第1副首相は、これは国有化や所有権の変更ではなく、特定の安全上の課題に対応するため国が経営に介入する措置だと説明した。
実際には、この政令が民間事業者に与える圧力は大きい。戦略的に重要とみなされる施設を運営する企業は、防空や避難体制を強化し、攻撃後も早期に復旧しなければ、一時的に経営権を失う可能性がある。政令の適用範囲や運用方法はまだ明確ではないが、同じ物流拠点が短期間に2度攻撃され、今回は全焼した事実は、ロシア政府がこの権限を急いで整備した背景を浮き彫りにしている。