7月、EVは「少数派」から市場成長の主役へ
欧州の2026年7月の自動車市場は、電動化が一段と加速した月になった。ただし、普及の進み方は一様ではない。
EU、英国、アイスランド、ノルウェー、スイスを含む集計では、完全電動車、つまりバッテリー式電気自動車(BEV)の販売が前年同月比51%増加し、新車販売に占める割合は25%に達した。市場全体の伸びは4.1%にとどまっており、EVが単なるニッチ商品ではなく、欧州の新車市場を押し上げる主要因になっていることが分かる。1〜7月のBEV販売も前年同期比37%増だった。
8
9
10
16
中国メーカーが欧州で構造的に台頭
7月に目立ったもう一つの変化は、中国ブランドの躍進だ。中国メーカーの合計シェアは過去最高の11.2%に上昇し、販売台数は前年同月比107%増となった。先頭に立ったのはBYDで、CheryとSAICが続いた。
3
5
さらに、Stellantisとの提携関係を持つLeapmotor、Xpeng、Changanなども販売を伸ばし、EVとプラグインハイブリッド(PHEV)を幅広くそろえることで競争を激しくしている。中国勢の攻勢は完全電動車だけに限られない。6月には、中国ブランドが欧州のPHEV販売の34%を占めた。PHEVは、EUが導入しているBEV向けの相殺関税の対象に含まれていないカテゴリーでもある。
9
12
13
Teslaは減速、既存メーカーの明暗も分かれる
中国勢の拡大とは対照的に、Teslaの7月の登録台数は前年同月比36%減少した。
12
13
欧州の大手メーカーも一枚岩ではない。競争力のあるEVを持つメーカーや法人・フリート販売に強いメーカーは成長を取り込んだ一方、ガソリン車やディーゼル車への依存度が高いメーカーは、内燃機関車の需要減少にさらされた。市場全体が拡大していても、その恩恵がすべてのブランドに行き渡っているわけではない。
燃料高と手頃な小型EVが購入を後押し
需要を支えた背景には、ランニングコストへの意識もある。EUの個人輸送向け燃料・潤滑油価格は、7月に前年同月比16.9%上昇した。ガソリンは前月比4.7%、ディーゼルは同4.3%上がっており、EVの走行コストを相対的に魅力的に見せる要因となった。
2
9
価格面では、Renault 5 E-Techのような比較的手頃な小型EVが選択肢を広げている。ルノーが発売を予定する電動Twingoも、より幅広い購入者を狙うモデルとして注目される。
2
9
それでも価格重視の消費者は残る
電動化が進む一方、内燃機関車の需要が消えたわけではない。Dacia Sanderoは7月に1万9,709台を登録し、欧州で最も売れた単一車種となった。
7
これは、価格を重視する消費者がEVへ一斉に移行しているわけではないことを示す。購入価格の高さや充電環境への不安が残る市場では、燃料費の差だけでEVを選ぶのが難しい場合もある。
国によって普及速度が大きく異なる理由
欧州のEV市場は、国ごとの政策と購入支援に大きく左右されている。フランスやドイツなど大規模で政策支援の強い市場では需要が伸び、他国の弱さを補った。
1フランスでは7月のEV比率が35%に達したとされ、支援策の設計が販売を直接動かしている。
イタリアでは、2026年のEcobonus制度により、条件を満たす電気自動車の購入に6,000〜1万1,000ユーロの支援が用意されている。低所得世帯による一定の買い替えでは、支援額がさらに増える場合もある。
1
一方、ポーランドではEVの普及率が低く、一部の国では購入支援が不安定だったり、制度が終了していたりする。主要市場以外では公共充電器の不足も依然として障壁だ。補助金の有無だけでなく、購入後に安心して長距離を走れる充電網を整備できるかが、今後の普及を左右する。
欧州の自動車市場はどこへ向かうのか
7月の結果は、欧州の自動車市場がEV需要、手頃な価格帯のモデル、そして中国メーカーの競争力によって組み替えられていることを示した。BEVの販売は市場全体を大きく上回るペースで伸び、EVはもはや一部の先進的な消費者だけの商品ではない。
ただし、次の成長段階が自動的に約束されているわけではない。消費者が負担できる価格、国ごとに安定した購入支援、十分な公共充電インフラ——この3つがそろうかどうかで、欧州の電動化はさらに加速するか、国ごとの差を広げることになる。