米財務省による対イラン制裁の発表は、当初予想されていたほど直ちに厳しい措置ではないと市場に受け止められた。ワシントンは二次制裁の対象となり得る行為の範囲を広げたものの、各国には対応のための時間を与えたため、イラン関連のエネルギー供給がすぐに大規模に途絶えるとの懸念が後退した。
その結果、原油供給を巡る短期的なショックは和らぎ、国債利回りは低下した。株式市場も全面的なリスク回避には向かわず、全体としては強弱が入り交じる展開となった。16
市場別に見る反応
原油:供給途絶への懸念が後退し、2ドル超下落
原油価格は、取引序盤の約1.5%下落に続き、1バレル当たり2ドル超下落した。トレーダーは今回の措置について、イラン産原油の流通を直ちに大幅に減らすものではないと判断した。23
もっとも、これは制裁リスクが消えたことを意味しない。制裁の運用や対象国の対応、報復措置によっては、エネルギー供給への影響が後から強まる可能性がある。
欧州株:STOXX 600はほぼ横ばい
欧州の主要株価指数STOXX 600は、ほぼ横ばいで取引を終えた。原油安は企業や消費者にとってコスト面の支援材料となり、国債利回りの低下も株式を下支えした。一方、テクノロジー株の弱さとイラン情勢を巡る不透明感が、上昇を抑えた。83
国債:米国債利回りは低下
米国債利回りは低下した。原油価格の下落に加え、制裁が直ちに一段と厳しい内容へ進まなかったことへの安堵感が、債券市場を支えた。債券市場の落ち着きは、株式市場にも一定の支援材料となった。37
ドルとビットコイン:ドル高も、全面的なリスク回避ではない
ドルは約3カ月ぶりの安値圏から反発した。対イラン措置に加え、通商政策を巡る不透明感もドル買いを支えた。14
一方、ビットコインは小幅に上昇し、約7万9,000ドルとなった。暗号資産が急騰したわけではなく、株式などのリスク資産からの決定的な逃避や、暗号資産への一方向の資金流入が起きた状況とは言いにくい。14
投資家がいま注目する材料
NVIDIA決算:AI相場の持続力を試す局面
水曜日に予定されるNVIDIAの決算は、人工知能(AI)関連株をけん引してきた上昇相場の重要な試金石となる。市場コンセンサスでは、四半期売上高は約920億ドルと見込まれている。投資家が重視するのは、発表された数字そのものだけではない。今後の需要見通しや会社側のガイダンスが、より大きな焦点となる。51
###FRB政策:ジャクソンホールでのウォーシュ氏の発言
金曜日に予定されるジャクソンホール会議で、ケビン・ウォーシュ議長が初めて行う基調講演も注目される。市場は、同氏が粘着的なインフレ、高止まりする長期金利、景気の強さをどう評価するのかを見極めようとしている。
また、政治的な圧力が取り沙汰されるなか、金融政策の独立性をどのように示すのかも重要な論点となる。61
###PCEインフレ指標:9月の政策見通しを左右する可能性
今週発表されるPCE物価指数は、米連邦準備制度理事会(FRB)が重視するインフレ指標だ。9月の利上げに対する市場の織り込みはおよそ40%にとどまっているため、予想を上回る物価上昇やウォーシュ氏のタカ派的な発言があれば、債券利回り、ドル、金利に敏感な株式が急変する可能性がある。2
制裁発表で和らいだのは「目先の不安」であり、リスクそのものではない
投資家が区別すべきなのは、今回の制裁発表が市場を安心させたのは、問題の「即時性」についてであって、「リスク」についてではないという点だ。今後は、制裁の具体的な実施方法、イランの報復、イランの取引相手国への enforcement(執行)、さらに原油輸送が混乱するかどうかが焦点になる。16
エネルギー供給が再び脅かされれば、原油価格と債券利回りが同時に上昇し、景気を圧迫する可能性がある。そうなれば、現在のAI関連株の高いバリュエーションにも重しとなり得る。投資家にとって今回の下落は、地政学リスクが解消されたサインというより、最悪のシナリオがひとまず先送りされた局面と見るのが適切だろう。63