結論:日銀は「利上げを見送る方がリスクが大きい」状況に近づいた
元日銀政策委員会審議委員の安達誠司氏は、日銀が9月18日の金融政策決定会合で、政策金利を現在の1.0%から1.25%へ引き上げる可能性が高いとの見方を示しました。市場がすでに利上げをかなり織り込んでいるため、日銀は期待に応えるというより、期待を裏切らない判断を迫られているというのが安達氏の主張です。1315
さらに、早ければ2027年1月にも追加利上げがあり得ると安達氏は指摘しました。利上げを先送りすれば、円売りが再び強まり、輸入物価を通じたインフレ圧力が一段と高まる可能性があるためです。1315
市場は9月利上げをどこまで織り込んでいるのか
市場では、9月の利上げ確率がおおむね76~80%と見積もられています。一部の報道では90%近い水準も示されています。113 7月末の米日による為替介入後、利上げ観測は大きく上昇しました。
安達氏の見方は、日銀がここで政策金利を据え置けば、為替介入による円の下支え効果を弱めかねないというものです。実際、介入後も円相場は1ドル=159円前後まで下落し、再び160円の節目に近づきました。1316
つまり、日銀にとって9月の据え置きは単なる金融政策上の判断ではありません。市場に「円安を抑えるための政策対応は一時的なものだ」と受け止められ、追加の円売りを招くリスクがあります。
米国と日本政府からも政策対応への圧力
米財務長官のスコット・ベッセント氏は、日本に対し、為替介入に続いて円を支える「政策とファンダメンタルズ」を示すよう求めました。市場では、日銀が過度に緩和的な姿勢を続けず、利上げを進めるよう促す発言と受け止められています。1
一方、積極的な利上げに慎重とみられてきた高市早苗首相の政権についても、9月または10月の近い時期に日銀が利上げすることを支持していると報じられました。26
ただし、為替介入だけで円安を持続的に反転させるのは難しいとの見方もあります。日米双方の政策や経済情勢が円を支えるという説得力を持たなければ、介入の効果は薄れやすいためです。416
安達氏が想定する利上げの道筋
安達氏は、政策金利が2027年末までに2%程度、あるいはそれを少し上回る水準に達する可能性があるとみています。これは、質問で示されたエコノミストの平均的な見通しである約1.5%を大きく上回る水準です。3
機械的な試算であるテイラー・ルールに当てはめると、金利は2.75%程度まで上昇する可能性も示されます。ただし、これはインフレ率や景気の需給ギャップなどから算出する基準値であり、安達氏の中心的な予測そのものとは限りません。
安達氏の想定は、日銀がこれまで示してきた「おおむね年2回」の利上げペースより速いものです。安達氏は7月時点では、2027年の政策金利を1.5~1.75%程度とみていましたが、インフレや円安への警戒が強まるにつれて、見通しはよりタカ派的になっています。3
利上げを急ぐ理由と、慎重論の根拠
利上げを進める根拠として、安達氏は基調的なインフレがなおプラス圏にあり、示された前提ではコアインフレ率が1.8%に達していることを挙げています。また、企業物価指数は7.2%上昇しており、企業コストの上昇が消費者物価に波及すれば、消費者インフレ率が2.5%を超える可能性もあります。15
もっとも、家計需要は力強いとは言えません。4~6月期の消費支出は前年同期比で0.1%減少しました。15 金利を引き上げれば、住宅ローンや企業の資金調達などを通じて景気を冷やす懸念も残ります。
そのため、安達氏の主張は「利上げにコストがない」というものではありません。景気への負担を抑えながら慎重に正常化する必要がある一方で、利上げを待つことによる円安とインフレ長期化のリスクが、現在は利上げのリスクを上回りつつあるという判断です。15
次の焦点は日銀幹部の発言
投資家は、9月に利上げするかどうかだけでなく、日銀が従来の緩やかな政策変更ペースを今後も維持するのかに注目しています。
手がかりとなるのが、氷見野良三副総裁ら日銀幹部の発言です。9月会合を前に予定される講演や記者会見で、追加利上げの条件や、円安・物価上昇に対する日銀の警戒感が示される可能性があります。
9月18日の決定が利上げとなれば、焦点は次に、日銀が2027年1月にも動くのか、そして政策金利を最終的にどこまで引き上げるのかへ移ることになります。