週明けの世界市場では、米国の長期国債利回りが低下したにもかかわらず、株価の重い展開が続いた。背景には、テクノロジー株・半導体株への売り、米国の財政と国債発行をめぐる懸念、そしてイランへの圧力強化をめぐる不透明感があった。
15秒でわかる今回の下落
今回の下落は、国債利回りが新たに急上昇したことが主因というより、これまで相場をけん引してきたテクノロジー株やAI関連株の上昇が続くのかを、投資家が改めて見極め始めたことが大きい。
米国では、S&P500が0.28%下落し、ナスダック総合は0.76%安。一方、景気敏感株などを含むダウ平均は0.26%上昇した。 欧州株はほぼ横ばい、アジア市場はまちまちとなり、債券市場の不安、AI株の変動、地政学リスクを見極める展開となった。
17
国債利回りは下がったが、債券市場の問題は残った
米財務省が、国債の買い戻し資金として約1兆ドル規模の一般勘定を活用する可能性があると報じられたことを受け、24日の取引では利回りが低下した。10年物米国債利回りは3ベーシスポイント超低下して4.704%、30年物は4ベーシスポイント超低下して5.234%となった。1ベーシスポイントは0.01%を指す。
12
これは、前週に進んだ国債売りの一部が巻き戻された動きだ。30年債利回りは直近、インフレへの懸念、膨らむ財政赤字、増加する米国債の供給を背景に、2007年以来の水準まで上昇していた。
4
5
米財務省はすでに、満期の長い通常利付国債の買い戻しを、1回当たり少なくとも40億ドルに倍増する計画を発表している。狙いは、長期債市場の流動性を支えることだ。
3
15
なぜ買い戻し効果は一時的だったのか
国債の買い戻しは、特定の銘柄の流動性を改善し、需要を支える効果が期待できる。しかし、政府が抱える根本的な資金調達需要をなくすものではない。市場では、米財務省が今後どれだけ国債を発行し、その供給をどの程度の利回りで吸収できるのかが引き続き焦点となった。
2
5
つまり、買い戻し策が対応するのは主に「市場の流動性」であり、政府債務の増加や財政運営への懸念そのものではない。この違いが、買い戻し発表後の債券上昇が長続きしなかった理由だ。
批判的な見方からは、借り入れを短期国債に偏らせることで、インフレや財務省の資金繰り、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策独立性に新たな問題が生じる可能性も指摘されている。
13
長期金利の上昇は、政府の利払いだけに影響するわけではない。米国債利回りは住宅ローン、消費者向け信用、企業融資の基準となるため、家計や企業の借り入れコストを押し上げる。AIインフラに大規模な投資を行う企業にとっては、資金調達環境の悪化が株価の重しになりやすい。
4
米国株ではテクノロジー株が主な下押し要因に
米国株の売りは、テクノロジー、半導体、AI関連銘柄に集中した。Micron Technologyは5.8%下落し、CoherentとLumentumもそれぞれ4%超下落。半導体ETFのSOXXは2.7%安となった。
成長期待の高いテクノロジー株は、金利見通しの変化に敏感だ。長期金利が上昇すると、将来の利益を現在価値に換算する際の割引率も高くなり、株価収益率の高い成長企業ほど評価を圧迫されやすい。
市場はまた、Nvidiaの決算を待っていた。AI向け半導体やデータセンター投資への需要が続いているのか、またAI主導の株高が借り入れコストの上昇や不透明感に耐えられるのかを判断する重要な材料とみられていた。
4
世界市場は一斉安ではなく、まちまちの動き
アジア市場では、指数ごとに方向が分かれた。
- 日経平均株価は0.38%高の6万5,774.93
- 韓国総合株価指数(Kospi)は0.94%安の6,634.13
- 香港のハンセン指数は0.25%安の2万5,453.19
- 上海総合指数は0.14%安の3,876.38
- オーストラリアのS&P/ASX200は0.57%高の9,154.70
17
欧州株は比較的落ち着いていた。汎欧州のSTOXX600は前日比横ばいの654.21で取引を終え、投資家はイラン情勢と、欧州の金融政策見通しを左右し得る経済指標を見守った。
米国市場の取引開始前には、S&P500先物が0.2%安、ダウ先物が0.1%安となる場面もあった。
11 ただ、取引終了時にはダウ平均が0.26%高まで持ち直した。半導体を中心とするテクノロジー株の下落が、S&P500とナスダック総合を押し下げた。
イラン制裁で不透明感、ただし原油は下落
投資家は、米国がイランに対して打ち出す新たな経済圧力策の詳細を待っていた。スコット・ベセント米財務長官は、イランの核・ミサイル開発、石油収入、サイバー活動に関係する60超の企業・個人・船舶を対象とする制裁を発表した。
18
イランの通貨リアルは、非公式市場で1ドル=202万リアルまで下落し、過去最安値を更新したと報じられている。
制裁強化にもかかわらず、原油価格は1バレル当たり2ドル超下落した。原油安は、追加的なインフレショックへの当面の懸念を和らげ、国債利回りや投資家心理を支える方向に働いた。
投資家が次に注目する材料
今週の相場を左右し得る主なイベントは次の通りだ。
- 7月の個人消費支出(PCE)物価統計:インフレが長期化し、金利が高止まりするほど根強いのかを見極める材料となる。
10
- ケビン・ウォーシュ氏のジャクソンホール講演:FRBがインフレと財政リスク、将来の利下げ期待をどのように両立させるのか、長期国債投資家が手がかりを探している。長期金利の方向を左右する重要な発言とみられている。
5
10
- Nvidiaの決算:AIインフラへの需要と、テクノロジー株の上昇基調が続くかを確認する機会となる。
4
- 米財務省の資金調達策:国債買い戻しの拡大や一般勘定の活用が、長期債を持続的に支えるのか、それとも短期的な取引環境を整えるにとどまるのかが問われる。
12
13
結論
24日の市場は、「国債利回りが低下すれば株価も回復する」とは限らないことを示した。半導体・テクノロジー株はなお金利上昇に弱く、投資家は米国の債務ファイナンスの持続性と、AI関連株の高い金利感応度を同時に意識している。
原油安は一部の安心材料となったものの、次の方向感を決めるのは、インフレ統計、米財務省の政策、Nvidiaの決算、そしてジャクソンホールでのウォーシュ氏の発言になりそうだ。
4
5