株価は初日に一時6倍超、評価額は約9億ドルから急膨張
中国・杭州に拠点を置くロボットメーカー、Unitree Robotics(宇樹科技)は8月19日、上海証券取引所のハイテク企業向け市場「科創板(STAR Market)」に上場した。中国本土で初めて上場したヒューマノイドロボット専業メーカーとされる。
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公開価格は1株150.8元。株価は取引開始後に一時1,100元まで上昇し、公開価格比で約629%高となった。その後は上げ幅を縮めたものの、終値は845元、上昇率は460%だった。Unitreeは新規株式公開(IPO)で約61億元(約9億500万ドル)を調達し、会社の評価額は公開価格時の約90億ドルから、取引中に約500億〜660億ドルへ膨らんだ。
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この数字は、現在の事業規模だけでなく、「将来、ロボットが大規模に職場へ導入される」という投資家の期待を株価が先取りした結果と見ることができる。
黒字は強みだが、ロボットの大量導入はまだ先
Unitreeが多くのヒューマノイドロボット新興企業と異なるのは、すでに利益を計上している点だ。2025年の売上高は約17億元(約2億5,200万ドル)と前年の4倍超に伸び、非経常項目を調整した純利益は約6億元に達した。
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ただし、黒字であることと、ヒューマノイドロボットが広範な業務で採算に乗っていることは同じではない。当時、実際の商用環境で稼働しているUnitree製ロボットの数はまだ少なく、売上の基盤には研究機関向け、展示・実演、試験導入なども含まれる。投資家が買っているのは、現在の導入実績だけでなく、今後の量産と用途拡大の可能性だ。
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先行者としての強みは「人型」だけではない
Unitreeはヒューマノイドだけでなく、四脚歩行ロボット、いわゆる「ロボット犬」も販売してきた。点検や危険環境での作業などを想定した製品群を持ち、派手なダンスや宙返りの動画によって世界的な知名度も得ている。
目論見書で開示された期間では、海外売上高が毎回、全体の40%超を占めた。すでに製品を市場に出し、顧客や研究機関から利用データを得ていることは、後発の国内企業に対する運用・改良面での先行優位になりうる。中国国内の比較的低コストなサプライチェーンも、量産を目指すうえでの強みとされる。
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もっとも、先行していることが、そのまま長期的な競争優位を保証するわけではない。歩行やアクロバットを実演できることと、工場・倉庫・店舗などで安全かつ安定的に働き続けることの間には、なお大きな技術的・経済的な隔たりがある。
投資家構成と「国家チャンピオン」のイメージ
Unitreeには、テンセントなど中国の大手テクノロジー企業が早くから出資していた。IPOでは、中国のAI企業DeepSeekが約1億4,080万元を投資したとされる。
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戦略投資家には、全国社会保障基金や国有エネルギー企業系の投資家など、政府とつながりの深い資本も名を連ねたと報じられている。
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中国政府はロボットを戦略産業の一つとして位置づけている。創業者の王興興氏が習近平国家主席と並んで公開の場に登場したことも、Unitreeが国を代表する企業になるとの見方を強めた。IPOの個人投資家向け枠には、約8,000倍の応募が集まったと報じられ、AIブームだけでなく政策支援への期待も投資家心理を押し上げたとみられる。
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ただし、政策上の追い風は将来の利益を保証するものではない。政府支援が研究開発や設備投資を後押ししても、最終的に問われるのは、ロボットが顧客の現場で継続的に収益を生み出せるかどうかだ。
創業者の資産は「紙の富」ながら一気に膨張
36歳の創業者、王興興氏は上場後もUnitree株の約5分の1を保有しているとされる。初日の株価急騰を受け、同氏の保有株の評価額は110億ドルを超えた。
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これは株式を売却して得た現金ではなく、市場価格に基づく評価額だ。株価が下落すれば、資産評価も同じように縮小する。IPOによって創業者と既存投資家の含み益が膨らんだ一方、今後の株価は、実際の受注や利益成長によって評価を維持できるか試されることになる。
米国市場と安全保障が成長の制約に
Unitreeにとって、米国は研究機関などへの販売実績を持つ重要な市場だった。しかし米連邦通信委員会(FCC)は7月、国家安全保障上の理由から、将来の外国製ヒューマノイドロボットや四脚ロボットの輸入を禁止した。対象にはUnitreeの製品も含まれると報じられている。
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米議会では、中国製ヒューマノイドロボットを米政府が購入・運用することを制限する法案も検討されている。
15こうした措置は、Unitreeが米国で研究機関や政府関連の顧客を拡大する可能性を狭める。
安全保障上の懸念は、単なる政策論争にとどまらない。米下院の公聴会ではUnitreeとDeepSeekが取り上げられ、証言では四脚ロボット「Go1」に、利用者の許可なくカメラ映像や制御機能へ遠隔アクセスできる脆弱性、いわゆるバックドアがあるとの報告が引用された。
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ただし、こうした証言や研究報告は精査を要する主張であり、Unitreeが意図的にスパイ活動や破壊工作を目的としてシステムを設計したと司法上認定されたことを意味しない。技術的な脆弱性の有無と、企業の意図や国家との関係は分けて考える必要がある。
米国の研究資金が中国製ロボット犬につながった皮肉
Unitreeのロボット犬をめぐっては、米国の公的研究資金が生んだ技術の流れも問題になっている。Reutersは、Unitreeの成功した四脚ロボットの設計が、米軍の資金で進められた四脚歩行技術の研究成果を基盤にしていると報じた。元米国防技術当局者や、その研究に関わった研究者らが証言しているという。
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これは、基礎研究の「デュアルユース(二重用途)」性を浮き彫りにする。公開された研究成果は民間企業の製品開発に使われうる一方、その企業が後に地政学上の競争相手とみなされる可能性もある。研究成果を公開してイノベーションを促すことと、戦略技術の流出をどう管理するかの間には、簡単には解けない緊張関係がある。
Unitreeの上場は、中国ロボット業界全体への号砲
Unitreeの上場は、一社の資金調達にとどまらない。中国本土で初めてのヒューマノイドロボット上場企業として、同業他社の評価額を測る基準を作ったからだ。
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上海のAgiBotは香港IPOの手続きを始めており、自動車大手・奇瑞汽車のロボット部門も上場を検討していると報じられている。
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1このほか、中国では複数のヒューマノイド・ロボット企業が、研究開発や量産、海外展開に必要な資金を公開市場から調達しようとしている。
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背景には、戦略技術へ国内資本を振り向けようとする北京の政策と、中国のテクノロジーIPO市場が再び活気を取り戻していることがある。Unitreeに先立ち、メモリーチップメーカーCXMTもSTAR市場への上場初日に株価が466%上昇した。
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問われるのは、熱狂を実需へ変えられるか
Unitreeの初値急騰は、中国がロボット大国を目指す意思と、国内投資家のAIへの強い期待を象徴する出来事だった。収益を上げる製品基盤、海外販売、先行者としての知名度、民間・政府系資本の支援は、同社の有力な材料である。
一方で、約500億〜660億ドルという評価額は、ロボットが将来、幅広い職場で人間に代わって安定的かつ経済的に働くというシナリオをかなり織り込んでいる。商用導入の規模、安全性、保守費用、米国市場へのアクセス、そして実際の利益成長——これらを証明できるかが、上場初日の熱狂が一過性のものか、産業の転換点だったのかを分けることになる。