2026年8月20日の暗号資産関連株の急騰は、1つのニュースだけで説明できるものではありません。市場では、米財務省による長期国債の買い戻し拡大というマクロ要因と、ドナルド・トランプ大統領による暗号資産規制法案「CLARITY Act(クラリティ法案)」への支持表明が、ほぼ同時に材料視されました。
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前者は市場全体のリスク選好を押し上げ、後者は暗号資産業界に固有の追い風となりました。ただし、CLARITY法案が成立したわけではありません。今回の上昇は、流動性と規制環境が改善する可能性を投資家が先回りして織り込んだ動きと見るのが妥当です。
急騰を招いた2つの材料
1. 米財務省の長期国債買い戻し拡大
米財務省は、満期までの期間が長い米国債を対象とする買い戻しの規模を、1回あたり20億ドルを上限としていた従来の水準から、少なくとも40億ドルへ引き上げると発表しました。新たな規模での買い戻しは9月9日から始まる予定です。
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この発表の直前には、30年物米国債利回りが2007年以来の高水準まで上昇する大規模な債券売りが起きていました。買い戻し拡大は、米財務省が長期債市場の流動性を支えようとしているとの見方につながり、長期金利の低下やドル安を通じて、暗号資産のような値動きの大きい資産に資金が向かいやすい環境を作りました。
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重要なのは、これは暗号資産専用の政策ではないという点です。米国債市場の需給や流動性に対する見方が変わり、市場全体が「リスクを取りやすい」方向へ傾いたことが、ビットコインや暗号資産関連株にも波及しました。
2. トランプ氏がCLARITY法案を再び後押し
トランプ氏は暗号資産業界の幹部を招いたホワイトハウスでの会合で、議会に対し、年内に「公正な内容の」CLARITY法案を可決するよう求めました。法案は上院で停滞していましたが、大統領による公の働きかけが、成立に向けた協議が再び動く可能性を意識させました。
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この材料を特に好感したのが、米国の暗号資産規制に業績や企業価値が左右されやすい企業です。取引所、トークン発行企業、ステーブルコイン事業者、ビットコインを財務資産として保有する企業にとって、暗号資産が「証券」なのか「商品」なのかを明確にするルールは、法令順守コストや事業の予見可能性に関わります。
CLARITY法案は何を変えるのか
正式名称を「Digital Asset Market CLARITY Act of 2025」とする法案は、下院法案H.R.3633として、暗号資産市場に「デジタル商品」の法的枠組みを設けることを目指しています。
法案の大きな柱は、証券取引委員会(SEC)と商品先物取引委員会(CFTC)の役割分担を明確にすることです。法案の定義に該当するデジタル商品については、CFTCが取引や関連する取引所、ブローカー、ディーラーを原則として監督する中心的な機関となります。一方、SECは一部のデジタル資産証券や、資金調達などの一次市場に関する権限を引き続き持つとされています。
業界側は、行政機関の解釈や個別の執行措置に左右される現状よりも、事業を展開しやすい予測可能なルールになると主張しています。一方で、投資家にとっては、取引プラットフォームやトークン市場が拡大するなかで、監督の分担が十分な保護につながるかが焦点になります。
なぜ政治的な対立が続いているのか
法案の支持者は、明確な市場構造を整備すれば、暗号資産企業が米国で合法的に事業を行う道筋ができ、デジタル資産分野での米国の競争力も高まると説明しています。
これに対して民主党議員や消費者保護を重視する側は、CFTCに権限を移すことでSECの監督が弱まり、投資家保護、取引プラットフォームの行動規範、マネーロンダリングなどの金融犯罪対策に空白が生じる可能性があると批判しています。
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さらに、法案の倫理規定も争点となっています。ロイターは、トランプ氏が家族の暗号資産事業から14億ドル超を得たと報じています。そのため、暗号資産に有利な法案を推進する大統領自身が、業界の成長によって利益を得る可能性があるという利益相反への懸念が浮上しました。
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この問題は、法案への市場の好反応とは別の政治的リスクです。大統領の支持表明は成立への期待を高めましたが、倫理規定を含む法案の調整が難航する理由の1つでもあり、8月20日時点で法案はまだ成立していませんでした。
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ビットコインと主要関連株の値動き
各社の報道では、通常取引、時間外取引、先物・プレマーケット、24時間ベースなど測定する時間帯が異なります。そのため、以下は8月20日に報じられた代表的な水準です。
- ビットコイン:ある報道では前日比5%超上昇し、約7万2,384ドルまで上昇。6月1日以来の高値となり、直前の2日間では約12%上昇しました。別の時間帯では7万1,505~7万1,880ドル付近で取引されており、数字には観測時点による差があります。
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- イーサ:直近24時間で約18%上昇したと報じられ、ビットコインを大きく上回る上昇率となりました。
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- Coinbase:CNBCの報道では取引時間中に約7%上昇。プレマーケットなど別の集計では異なる上昇率も報じられています。
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- Circle:Coinbaseと同様、同じ報道で約7%上昇しました。
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- Strategy:ビットコインの保有比率が高い企業として、ビットコイン価格の上昇に連動して買われました。報道された上昇率は、時間帯によって約6%から8%超まで幅があります。
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- Canaan:ビットコインのマイニング機器メーカーとして関連株の上昇に加わり、ある市場報道では12.5%高とされました。ただし、報道ごとに対象時間が異なるため、確定した終値ベースの変化率とは区別する必要があります。
- Robinhood:暗号資産取引を手がけるプラットフォーム株としてプレマーケットで上昇し、ある報道では5.77%高でした。これは通常取引の終値の上昇率ではありません。
投資家が見るべきポイント
今回の上昇には、2つの異なる層がありました。米財務省の買い戻し拡大は、債券市場の流動性改善と長期金利低下への期待を通じて、市場全体にリスクオンの追い風を送りました。一方、トランプ氏のCLARITY法案支持は、暗号資産企業がより明確で、場合によっては業界に有利な米国のルールの下で事業を展開できるとの期待を高めました。
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ただし、どちらも持続的な上昇を保証するものではありません。国債買い戻しによって長期金利が継続的に低下するとは限らず、大統領が支持しているからといって、上院で意見の割れる法案が必ず可決されるわけでもありません。
したがって、8月20日の急騰は、規制改革の実現や新たな流動性の確定を示したものではなく、金融環境の改善期待と政治的な勢いを市場が先取りした動きだったと整理できます。