Rampのデータによると、米国のRamp利用企業では7月時点でAnthropicがOpenAIをなお上回っている。ただし、2026年第3四半期に入ってからの伸びはOpenAIの方が速く、企業向けAI市場がまだ流動的であることを示している。これは企業の支出動向を把握するうえで有用なデータだが、米国全体の市場シェアを表すものではない。67
5月から7月、両社の比率はどう変わったか
- 5月、AnthropicはRamp利用企業の約41%から支払いを受け、OpenAIの約39%を初めて上回った。5
- 7月にはAnthropicが43.5%、OpenAIが39.7%となり、Anthropicのリードは広がった。3
- しかし、より直近の第3四半期累計データでは、OpenAIの有料企業ユーザーの増加ペースがAnthropicを上回り、差を縮め始めている。67
ここでいう比率は、Rampの顧客のうち各社に支払っている企業の割合だ。売上高ベースのシェアではなく、両方のサービスを同時に利用している企業も含まれる。そのため、両社の数字を足して100%になるわけでもない。
OpenAIが追い上げる背景は何か
Rampがまとめた7月のモデル利用データでは、OpenAIの「GPT-5.6 Sol」が同社モデルのトークン購入量の25%、モデル関連支出の23%を占めた。これに対し、Anthropicの「Fable 5」はトークン量で6%、支出額で11.4%だった。Fable 5が生み出した推計支出額は、Solの約75%にとどまる。3
考えられる要因の一つは、Solの価格性能比や使いやすさに対する開発者の評価だ。Rampによると、Fable 5の料金は100万トークン当たり約10ドルで、報告された性能が高い一方、Solの約2倍だった。3
また、規制対象の業務や機密情報を扱う企業にとっては、Anthropicの先進モデルに適用される30日間のデータ保持要件が導入の障壁になった可能性もある。報道によれば、Anthropicは企業顧客がこのデータ保持を自社のクラウド基盤上で管理できるよう、方針を変更する計画だという。これは一定の不利に働き得る条件だが、今後変わる可能性もある。124
もっとも、これらはあくまで考えられる説明であり、因果関係が証明されたわけではない。Rampの決済データだけでは、企業が特定のモデルを選んだ理由や、利用を追加・停止した理由までは分からない。
データを読む際の注意点
- 対象は、Rampの法人カードや請求書支払いサービスを利用する7万社超の米国企業による、集計・匿名化された取引データだ。米国企業全体や、すべての企業向けAI契約を網羅しているわけではない。3
- クラウドマーケットプレイス、再販業者、調達システム、他のソフトウェアに組み込まれた契約、Ramp外で処理された請求書経由の支出は、十分に反映されない可能性がある。
- Fable 5とSolを比較したトークン支出のサンプルは、Rampの通常のAI Indexよりもテクノロジー企業に偏っている。そのためRamp自身も、Fable 5の実際の普及率は推計を下回る可能性があると説明している。3
- Rampの顧客や、モデルのトークンを直接購入する企業は、一般的な米国企業よりもテクノロジー導入に積極的な可能性が高い。したがって、この結果を米国の企業向けAI市場全体の確定的なシェアとして扱うことはできない。43
企業はまだ特定ベンダーに固定されていない
Anthropicが急速に伸びた後、OpenAIがより速いペースで追い上げていることは、企業向けAIの支出がベンダー単位ではまだ固定化されていないことを示唆する。企業は、性能、価格、プライバシー条件、開発者向けツールの使い勝手が変われば、複数のモデルを試したり、調達先を分散したり、別のモデルへ切り替えたりする余地を残しているようだ。67
これはAIへの支出そのものが縮小しているという意味ではない。むしろ、特定ベンダーへの囲い込みがまだ限定的で、新モデルの登場や料金・データポリシーの変更が、企業の購買行動を短期間で動かし得るということだ。
競争の舞台自体も拡大している
Ramp利用企業のうち、AIサービスに料金を支払う企業の比率は3月に50.4%へ達し、初めて50%を超えた。3
この比率は7月には約56%まで上昇した。つまり、OpenAIとAnthropicの競争は、固定された顧客を奪い合うだけでなく、急速に拡大する企業向けAIの購入者層の中で進んでいる。3
結論として、7月時点のRampのサンプルではAnthropicがより大きな利用企業基盤を持っていた。一方で、直近の勢いはOpenAIにあり、価格、プライバシー、開発者体験の変化が企業向けAIの勢力図を再び大きく動かす可能性を示している。