成体のギガノトサウルスを形づくっていた最大の武器は、長く低い頭骨だった。その顎には、薄く圧縮され、縁に鋸歯を備えた歯が並んでいた。
ティラノサウルス・レックスの厚く丸みを帯びた歯が、骨を砕くための強固な杭に近いとすれば、ギガノトサウルスの歯はステーキナイフに似ている。肉へ深く入り込み、筋肉を切り裂き、大きな傷を生じさせることに向いていたと考えられる。
歯は狩りや死肉食の中で折れたり失われたりしたとしても、生涯にわたって新しく生え替わった。巨大な捕食者にとって、これは重要な保険だった。
首は筋肉質で、胴体は深い。数トンに及ぶ体重を支える後肢は、攻撃のたびに大きな運動量を生み出した。腕は体全体と比べれば小さいものの、ティラノサウルスの腕ほど極端に縮小してはいない。3本の指を持っていたが、獲物との格闘で主役を務めたのは、腕ではなく顎、首、脚、そして体重だった可能性が高い。
ロドルフォ・コリアとフィリップ・カリーは、ギガノトサウルスの脳函を調べ、頭蓋内に収まっていた脳の形を復元した。その研究からは、体の巨大さに比べれば控えめな大きさではあるものの、視覚、平衡感覚、運動、捕食行動を調整できる獣脚類らしい脳が示された。
内耳には大きな半規管があり、頭部の動きを把握するのに役立ったと考えられる。さらに、嗅覚や視覚も獲物の発見に使われただろう。
「頭が悪い恐竜」と表現するのは正確ではない。ギガノトサウルスに必要だったのは、人間のような抽象的思考ではない。自分の縄張りを学び、獲物との距離を測り、攻撃する価値があるかを判断する能力だった。一度脚を折れば、数トンの肉食動物であっても飢えに直結する。捕食者の生涯は、つねに危険と隣り合わせだった。
2001年、R・エルネスト・ブランコとヘラルド・マゼッタは、ギガノトサウルスの生体力学的モデルを作成し、安定性が危険なほど失われる前の上限として、毎秒約14メートルという値を示した。これは時速約50キロメートルに相当する。
しかし、この数字を実際に記録された走行速度と受け取ってはいけない。化石は疾走の瞬間を直接保存しない。とりわけ、これほど巨大な動物では、速度計算の前提に不確実性が大きい。
より慎重な結論は、短距離なら強力に動けた一方、長時間の追跡よりも、位置取りと初速を利用していた可能性が高いというものだ。
ギガノトサウルスが暮らした土地には、成体なら自分よりはるかに巨大な竜脚類がいた。そんな相手を正面から押し倒すのは、現実的な戦略ではない。
狙い目になったのは、若い個体、負傷した個体、群れから離れた個体、あるいは疲弊した個体だっただろう。ギガノトサウルスは側面から近づき、踏みつぶす足や鞭のような尾を避けながら、柔らかな筋肉へ攻撃を加えた可能性がある。
一度深く噛み付いて離れないのではなく、何度も切り裂いて出血させ、相手が弱るのを待つ。そうすれば、危険な組み合いを長く続けずに済む。
これは頭骨と歯の形から考えられる、筋の通った仮説だ。しかし、ギガノトサウルスが実際に獲物を襲う瞬間を保存した化石はない。狩りをせず、死肉を利用することもあったはずだ。無防備な死骸なら、蹴られたり踏みつぶされたりする危険なしに、同じ栄養を得られるからである。
映像作品では、複数のギガノトサウルスが連携して巨大な獲物を襲う姿が描かれることがある。しかし、ギガノトサウルス自身が協調的な群れで狩りをしたことを示す直接的な証拠はない。
ただし、複数個体が同じ場所で死んだことは、計画的な群れ狩りの証明ではない。餌の周囲に集まっていたのか、短期間だけ互いを許容していたのか、同じ弱った獲物を別々に狙っていたのか、別の説明も可能だ。
協力行動は興味深い可能性ではある。しかし、現時点では確立した事実ではない。
そして、必ず語られる相手がいる。ティラノサウルス・レックスだ。
だが、2頭が戦うことはあり得なかった。ギガノトサウルスは約9800万年前の南米に生息していた。一方、ティラノサウルスが北米に現れたのは白亜紀末、約6800万〜6600万年前である。両者の間には、およそ3000万年の隔たりがあり、生息大陸も異なっていた。
したがって、両者の戦いは失われた先史時代の事件ではなく、科学的な思考実験である。
ティラノサウルスは、より深く頑丈に補強された頭骨と、厚い歯、骨を損傷させるほど強力な咬合力を備えていた。距離を詰め、首や頭、胴体をつかみ、強い力で押さえ込む戦法が有利だっただろう。
対してギガノトサウルスは、正面からの組み合いを避けるほうがよい。長い頭骨と切り裂く歯を活かし、側面から攻撃して傷を開き、離れ、再び周囲を回って襲う。何度も深い傷を与えれば、出血が相手を弱らせる可能性がある。
もちろん、どちらが勝つかを化石から決めることはできない。最初の一撃、足場、疲労、年齢、経験、そして痛みに対する反応が結果を左右しただろう。近距離の組み合いならティラノサウルスが優位だった可能性があり、距離を保てるならギガノトサウルスにも勝機があったかもしれない。
しかし、現実の自然界で最も重要なのは、戦いに勝つことではなく、危険な戦いを避けることだった。
成熟したギガノトサウルスは、生涯の多くをエネルギーの節約に費やしたはずだ。獲物の多い土地を移動し、食べ、休み、競争相手に反応する。頭骨や体の大きさを見せつけることで、実際の接触を避けられた場面もあっただろう。
それでも、年月は体に刻まれる。傷、感染症、寄生虫、折れた歯、失敗した狩り。頂点に立つ捕食者であっても、永遠に強くはいられない。
ある個体がどのように死んだのかは、骨だけでは分からない。負傷、病気、飢え、干ばつ、他個体との争い、あるいは単純な老衰。死後、その体は小型の捕食者や腐肉食者、昆虫、微生物の食料となった。そして残された骨に堆積物がかぶさり、長い地質時代が始まった。
鉱物が組織の隙間へ入り込み、骨を置き換え、満たしていく。山が隆起し、川が流路を変え、大陸が動く。その遥かな時間の先で、1993年、ルベン・カロリーニが地中から骨を見つけた。
絶滅した巨獣は、そこで初めて人類の知識の中へ帰ってきた。
ギガノトサウルスは、ティラノサウルスの巨大な模倣者ではない。異なる系統に属し、異なる大陸で、異なる環境に生き、異なる捕食戦略を磨き上げた恐竜だ。
その物語の核心は、架空の決闘でどちらが勝つかではない。
卵の中で始まった小さな命が、乾いた川辺と氾濫原を生き抜き、やがて数トンの巨体へ成長する。長い尾で体を支え、強力な後肢で地面を踏み、何度も生え替わる歯を武器に、地上最大級の動物たちへ挑む。
ギガノトサウルスの偉大さとは、最も強い一撃を持っていたことだけではない。傷つきやすい幼体から、距離とタイミングと持久力を武器にする巨大捕食者へ変わったことにある。
それは、白亜紀の大地で進化が生み出した、ひとつの完成形だった。