DJIは控訴。同社は一貫して、自社は民生用ドローンとカメラ技術を手がける企業であり、中国政府に所有・支配されておらず、中国軍とも関係がないと説明している。
またDJIは、製品が軍事目的にも利用され得るのは、市販ドローンが持つ「デュアルユース(軍民両用)」の性質によるもので、軍事所有や軍用機器の製造、戦闘を想定した販売活動によるものではないと主張している。同社は戦闘目的での利用を非難し、そうした利用を抑止または防止するための方針や措置を導入したとしている。
しかし地裁は、軍事利用を禁じるDJIの方針があっても、技術が持つ潜在的または実際の軍事用途までは消えないと判断した。
2026年8月14日、米D.C.巡回区控訴裁は、地裁判決の一部を認め、一部を取り消したうえで、さらなる手続きのため事件を差し戻した。
焦点となったのは、DJIが中国の防衛産業基盤に貢献しているという判断だ。控訴裁は、国防総省による公開説明が完全に黒塗りだった以上、地裁が非機密の公開記録だけを根拠にこの判断を維持することはできないとした。一方、セクション1260Hは、政府が裁判所に機密資料を「一方当事者のみの提出(ex parte)」および「非公開審理(in camera)」の形で提出することを認めていると指摘した。
つまり今後、地裁は機密証拠を含む行政記録全体を確認し、その指定理由が十分に裏付けられ、法的に維持できるかを判断することになる。
ただし、判決の射程は限定的だ。控訴裁は、DJIが中国の防衛分野と無関係だと認定したわけでも、指定の根拠をすべて退けたわけでも、同社を直ちにリストから削除するよう命じたわけでもない。報道によれば、DJIが提起したより広範な主張のうち三つは退けられ、機密記録の扱いに関する論点だけが再検討のため差し戻された。
国家安全保障に関わる企業指定では、政府が公開できないとする情報が判断材料になることがある。今回の判決は、国防総省が機密情報に依拠すること自体を禁じたものではない。公開記録だけでは中心的な結論を説明できない場合、政府が根拠とする資料を裁判所が実際に確認し、意味のある司法審査を行わなければならないとした点に意味がある。
この考え方は、同様の指定に直面する他社にとっても重要だ。政府機関は機密情報を一般公開から守ることができる一方、指定を審査する裁判所は、政府が根拠とする証拠を確認しなければならない。今回の判断は、DJIの当面の立場だけでなく、国家安全保障上の企業指定を司法がどのように審査するかにも関わる。
農業では、ドローンによる圃場の画像化、作物の生育監視、地図作成、精密散布の作業などが利用されている。調査会社Grand View Researchによると、米国の農業用ドローン市場は2024年に5億630万ドルと推定され、DJIも同市場で活動する企業の一つに挙げられている。
今回の控訴裁判決だけで、米国のすべての顧客がDJI製品を購入・運用できる条件が変わるわけではない。セクション1260Hをめぐる訴訟は、輸入、政府調達、通信、航空、機器認証などに関わる別の規制や制限とは別の問題だ。
農家や業務用ドローン事業者にとっての当面の結論は、「利用環境は直ちには変わらないが、法的な不確実性は続く」ということだ。下級審での再検討の結果によっては、DJIが国防総省の指定に異議を唱える余地が広がる可能性がある。しかし、2026年8月14日の判決だけで、指定が解除されたわけではない。