ロシアからEUへの輸出は、スケトウダラだけに限られない。2026年上半期には、次のような水産物も供給された。
月別に見ると、6月のロシア産水産物のEU向け輸出額は7,490万ユーロだった。5月の1.7倍で、2024年11月以降で最も高い水準となった。輸入の中心はフィレや魚肉で、主に冷凍スケトウダラとタラが占めた。
背景の一つとして挙げられているのが、2026年のバレンツ海産タイセイヨウダラの総漁獲可能量(TAC)の削減だ。TACは前年比16%減の28万5,000トンに設定され、ロシアの割当量は13万6,000トンと報告されている。
漁獲枠の削減だけで価格変動のすべてを説明できるわけではない。しかし、供給制約が強まる要因となるため、タラを原料に使う加工業者にとっては仕入れコストの上昇や調達先変更の難しさにつながり得る。
欧州委員会は第21次制裁パッケージの発表時、水産業を「大規模な制限がまだ導入されていない最後の主要分野の一つ」と位置づけた。提案には一部魚種への大幅な輸入制限に加え、タラの全面禁輸が含まれていた。
しかし、ドイツ、ポーランド、ポルトガルなどの反対を受け、加盟国の大使らは水産物に関する条項を削除した。
反対の背景には、供給網への影響に対する懸念があったと報じられている。ドイツとポーランドの加工業者はスケトウダラへの依存度が高く、ポルトガルではタラの需要と加工関連の事業が重要だとされる。突然の輸入禁止は原料価格を押し上げ、加工施設の操業や雇用を圧迫し、食品価格の上昇につながる可能性があった。
EUは2022年にロシア産キャビアの輸入を禁止しているが、タラやスケトウダラといった日常的な白身魚は、制裁後も商業的に重要な位置を保っていた。今回の措置撤回は、EUが対ロ制裁全体を放棄したことを意味するものではない。むしろ、加工業者や消費者が既存の供給網に依存する品目では、制裁と安定調達の両立が容易ではないことを示している。
2026年上半期の統計から見えるのは、ロシア産水産物への依存が制裁政策の実行を難しくしている構図だ。ロシア産スケトウダラ・フィレのEU向け輸出は6万6,000トンに増え、米国と中国の供給は減少した。魚介類全体の輸出額も4億1,700万ドルに達した。
代替供給が急速に増えていない状況では、全面禁輸は単なる貿易政策ではなく、加工業の原料調達、雇用、消費者価格に波及する問題となる。タラの価格上昇と漁獲枠の削減は、その影響をさらに大きくする可能性がある。
なお、今回提供された記録だけでは、ノレボ(Norebo)やムルマン・シーフード社(Murman Seafood Company)の具体的な関与を裏付ける十分な証拠は確認できない。また、ロシア産品がEU市場のおよそ3分の1を占めるという主張も、この記録からは検証できない。これらは追加の根拠がない限り、確定した事実として扱うべきではない。