国債利回りは、AI関連の社債発行だけで決まるものではない。市場では、次の要因が重なっている。
したがって、ハイパースケーラーの借り入れは需給の不均衡を強める一因にはなり得るものの、国債利回り上昇の主因だとする証拠は現時点で十分ではない。AI債務をめぐる議論では、影響の可能性と、単独の因果関係を区別する必要がある。
ハイパースケーラーは米ドル市場だけに頼らず、投資家層と通貨を分散させている。
Alphabetはすでにユーロ、ポンド、スイスフラン、円などの社債市場でも大口の借り手となっている。Amazonが3月に実施した145億ユーロの8本立ての起債は、ユーロ建て社債市場で過去最大の案件だった。
なお、豪州市場における外国企業の発行額が「約600億豪ドル」に達したという記録や、2028年までの資金調達計画3.2兆ドルのうち1.75兆ドルを調達するとの具体的な数字については、確認できた主要ソースでは裏付けられない。これらは元の調査資料を確認するまで推計値として扱うべきだ。
Alphabet、Amazon、Metaの親会社が発行する債券と、データセンター開発会社、機器サプライヤー、新興AI企業、特別目的会社が発行する債券は、同じAI関連でも性質が大きく異なる。
投資家は、次の点を区別しなければならない。
表面利回りが高いからといって、追加の信用リスクや流動性リスクが十分に補償されるとは限らない。
高い利回りの多くは、長い満期の債券から得られる。市場金利がさらに上昇すれば、既発債の価格は大きく下落する可能性がある。反対に金利が低下すれば、固定された高いクーポンは価値を持つが、将来の再投資利回りは低下する。
債務の返済は、AIインフラから得られる最終的な収益や投資効果が十分に実証される前から始まる。AIサービスの収益化が想定より遅れたり、設備投資が高止まりしたり、競争によってクラウドやAIの利益率が低下したりすれば、現在は財務基盤の強い企業でもレバレッジ指標や信用スプレッドが悪化する可能性がある。
投資家の需要は強いものの、発行額の増加と利回り上昇を受け、選別色も強まっている。Barclaysのアナリストは、投資適格債市場だけではハイパースケーラーの想定される資金需要をすべて吸収できない可能性を指摘している。
その場合、企業はより高いクーポンや信用スプレッドを提示するほか、プライベートクレジット、株式発行、プロジェクトファイナンスなど、より複雑な資金調達手段に頼ることになる可能性がある。
ハイパースケーラーのAI投資は、世界の長期資金にとって無視できない新たな需要源になった。企業債の大量供給は企業の借入コストを押し上げ、国債を含む長期債市場の利回りにも波及し得る。
しかし、AI債務だけで国債利回りの上昇を説明するのは適切ではない。投資家にとっては、これらの債券を「国債の代わり」とみなすのではなく、発行体の財務力、債務の優先順位、満期、通貨、流動性、AI事業の収益性を確認したうえで、分散された信用投資の一部として扱うのが妥当だ。
特に利回り8%前後の商品に手を伸ばす場合は、数字の高さだけでなく、その上乗せ分がどのリスクへの対価なのかを見極める必要がある。