9to5Macによると、Appleは今回の変更について、ユーザーにより良い体験を届けるために事業を進化させるものだと説明しています。新たなポジションを設ける一方で既存の一部ポジションも影響を受けるとしており、対象者は社内の別ポジションに応募できたと報じられています。
ヘッドセットの普及には、ハードウェアそのものだけでなく、「何度も使いたくなる理由」が必要です。ゲームやイマーシブ映像は、その理由を生み出す中核的なコンテンツでした。
そのため、両分野のチーム縮小は、AppleがVision Proを幅広い消費者向けプラットフォームへ育てるためのコンテンツ投資を、従来ほどの規模では続けない可能性を示します。報道では、Vision Proのゲーム部門は大部分が閉鎖され、イマーシブ映像チームも縮小されたとされています。
もっとも、これはAppleがvisionOSや既存のVision Proを完全に放棄したことを意味しません。より重く、周囲から隔絶されやすいヘッドセット型製品を、当初想定された規模で拡大することに慎重になっている、と見るべきでしょう。
今回の削減は、ティム・クック氏の後を継ぐジョン・ターナス氏が、AppleのVR戦略の一部を保留し、Siri、Apple Intelligence、スマートグラスへ資源を移すとの報道と重なります。Bloombergは、今回の人員削減を新しいデバイスとAIに注力する取り組みの一環と報じています。
また、ターナス氏がVision製品のロードマップを大幅に見直し、第2世代Vision Proや、より軽量な「Vision Air」の計画を取りやめたとの報道もあります。これらはアナリストやメディアの情報に基づくもので、Appleが公式に発表した内容ではありません。したがって、特定製品の中止がすべて確定したと断定することはできません。
重要なのは、Appleが空間コンピューティング全体を捨てようとしているのか、それとも大型の密閉型VRヘッドセットから距離を置こうとしているのかを区別することです。
スマートグラスであれば、ユーザーを周囲から隔離しにくい形でAI搭載ウェアラブルを展開できます。Vision製品で培ったソフトウェア、コンピュータービジョン、ディスプレー技術の一部も、次世代のメガネ型デバイスに生かせる可能性があります。
組織再編のさなか、空間コンピューティング部門では幹部の離脱も起きています。Vision ProとAppleのスマートグラス開発を統括していた副社長のポール・ミード氏は、2026年6月、Appleを離れてOpenAIのハードウェア部門に移ると報じられました。
MacRumorsによると、Vision Proとスマートグラスのプロダクトデザインを率いていたフレッチャー・ロスコフ氏が、ミード氏の後任を務めるとされています。
ミード氏の退社だけでVision Proの中止が決まるわけではありません。しかし、現行ヘッドセットと次世代ウェアラブルの双方に関わる上級幹部が、戦略の転換期に社外へ移ったことは、組織にとって小さくない変化です。
今回の削減は、Appleが近年実施した人員削減の中でも、製品戦略との結びつきが特に強いものです。
この比較から、Appleが全社的な大規模レイオフに入ったと判断することはできません。むしろ、製品ごとの優先順位に応じて人材を選択的に移し替える再編が続いている、と考えられます。
現時点で最も慎重かつ妥当な結論は、Appleは空間コンピューティングの計画を縮小・再編しているものの、Vision ProやvisionOSを完全に放棄したとは確認されていないというものです。VR関連のポジションが削減される一方で、Vision組織全体が消滅したわけではないとする報道もあります。
不透明なのは、今後のハードウェアロードマップです。これまで噂されてきたVision Pro後継機のすべてが開発中なのか、公開情報だけでは判断できません。第2世代Vision ProやVision Airが中止されたという報道と、単にカテゴリー全体が一時停止しているという見方には開きがあり、いずれもAppleによる公式確認はありません。
現時点で整理できるポイントは次の通りです。
Appleのメッセージを一言で表すなら、「Visionは終わった」ではなく、「Vision戦略をより小さく、選択的にし、AIとスマートグラスに密接に結び付ける」という方向です。今後注目すべきなのは、visionOSの継続的な更新そのものだけでなく、Appleがその技術を最終的に大型ヘッドセット、あるいは日常的に身につけるメガネのどちらへ重点的に展開するのかです。