航法上のミスや電子戦の影響、ウクライナへの攻撃からの飛来が含まれていたとしても、結果としてNATO側の警戒と対応を継続的に強いることに変わりはない。このように、戦争と平時の境界を曖昧にしながら相手の反応を探る行為は、いわゆる「グレーゾーン」あるいはハイブリッド戦の一部として捉えられる。
同様のロシア軍ドローン関連の事案は、ポーランド、リトアニア、ラトビアでも確認または疑われている。モルドバでもドローンやその破片が発見された。NATOは8月、ポーランドとルーマニアで相次いだ領空侵犯や関連するドローン事案を協議し、影響を受けた同盟国への連帯と支援を表明した。
つまり、脅威の中心はルーマニア単独ではなく、黒海からバルト海に至るNATO東部地域全体へ広がっている。国境に近い地域で大量のドローン攻撃が続けば、警報や戦闘機の発進が日常化し、住民の不安と軍事的な緊張が積み重なる。
シャヘドまたはゲラン系列の攻撃ドローンは、1機あたりおよそ2万〜5万ドルとされる。一方、これを高価な戦闘機の出撃や空対空ミサイルで迎撃すれば、たとえ撃ち漏らしがなくても、迎撃側の弾薬と予算が先に圧迫される可能性がある。
この不均衡を埋めるには、目標に応じて複数の手段を組み合わせる「多層防空」が欠かせない。ルーマニアが導入した対ドローンシステム「Merops」は、その一例だ。報道では、大量調達時の1回の迎撃コストを約3,000ドルまで下げられる可能性があるとされている。
重要なのは、すべての小型ドローンに高額なミサイルを使うのではなく、センサー、電子戦、低コストの迎撃ドローン、通常の防空ミサイルを脅威の種類に応じて使い分けることだ。
この報告だけで、NATOへの差し迫った攻撃が計画されていると結論づけることはできない。ただし、NATOの国境に近い場所から、より多数の、より長距離のドローンを運用できる能力が拡大している可能性は示す。ウクライナへの攻撃能力を高めるための施設であっても、その配置がNATO側の警戒対象になるのは避けられない。
NATO加盟国は今後5年間で、対ドローン能力に400億ドル超、約340億ユーロを投資すると発表した。ドローン運用要員の訓練拡大や、NATO域内で相互運用性を確認した装備を迅速に調達する仕組みも計画されている。
今後の焦点は、単に戦闘機の哨戒回数を増やすことではない。必要となるのは、以下を一体化した地域防空網だ。
今回の事案のすべてが、ルーマニアや別のNATO加盟国への計画的な通常攻撃を意味するわけではない。より現実的な危険は、安価で否認可能なドローン活動が頻発することで、NATOが自国領空を管理し、守る能力への信頼が少しずつ損なわれることだ。
そして、民間人の死傷や迎撃機との衝突が一度でも起きれば、意図していなかった軍事的エスカレーションにつながる可能性がある。ルーマニアで8月17日までに23件の領空侵犯が記録されたという事実は、単なる件数の増加ではない。NATO東部戦線が、低コストで大量投入できる無人機に対し、持続可能な防空と抑止の仕組みを構築できるかどうかが問われている。