追加策の発表を促したのは、7月の経済指標です。鉱工業生産は前年同月比4.5%増にとどまり、市場予想の4.8%増を下回りました。消費の動きを示す小売売上高は0.6%増で、予想の1.5%増を大きく下回っています。1〜7月の固定資産投資は6.7%減少しました。
生産や輸出が比較的底堅い一方、家計消費、民間投資、不動産市場に関連する地方政府の収入は弱いままです。輸出や製造業だけでは、国内経済の幅広い需要不足を埋めにくくなっています。
北京が段階的な対応を選ぶ最大の理由は、過去の成長モデルをそのまま繰り返したくないためです。不動産開発やインフラ投資を地方政府の借り入れで大規模に拡大すれば、短期的には成長率を押し上げられます。しかし、過剰債務や不動産問題をさらに深刻化させるおそれがあります。
中国は現在、地方政府の簿外債務、いわゆる「隠れ債務」の処理も進めています。2024年には、地方政府の高コストな簿外債務を、より低コストで償還期間の長い地方債に置き換える10兆元規模の債務スワップ計画を打ち出しました。また、地方政府融資平台(LGFV)を2027年半ばまでに解消する目標も掲げています。
このため、地方政府に新たな借り入れを促して大規模な投資を再開させる政策は、現在の債務整理方針と相いれにくい状況です。消費者や企業の利子負担を軽くする施策なら、現金を一律に給付したり、新たな巨大インフラ計画を立ち上げたりするより、初期の財政負担を抑えながら需要を刺激できます。
これは決して小さくない財政対応ですが、地方政府の支出を無制限に増やせることを意味しません。政府は2030年までの財政・税制改革も進めており、中央政府と地方政府の役割や収入配分を、より持続可能な形に見直そうとしています。新たな隠れ債務を生み出さないという方針も示されています。
そのため、中央政府による支援、消費者向け補助、政策銀行や商業銀行を通じた融資、すでに予算化されたインフラ投資の加速を組み合わせる現在の方式は、無差別な大型刺激策よりも財政・制度改革との整合性が高いとみられます。
現時点で、次の大規模な支援策の時期や規模は決まっていません。世界的なAIインフラ需要を背景に、ハイテク製造業や輸出が比較的堅調であることは、政策当局に一定の余裕を与えています。そのため、直ちに大規模な景気対策へ踏み切る必要性は抑えられています。
ただし、輸出や先端製造業の強さは、家計の消費意欲、民間投資、不動産低迷に伴う地方政府収入の弱さを直接的に解決するものではありません。今回の措置は、北京が内需の悪化に対応する意思を示したものです。一方で、今後さらに支援を拡大するかどうかは、小売売上高や投資など国内需要の指標がどこまで悪化するかにかかっています。