アリババはQwenについて、広く利用されるモデルにすることと、モデル利用をアプリケーションやクラウドサービスの需要につなげることを同時に目指しています。Qwenがユーザーを呼び込む入口になり、Alibaba Cloudがモデルのホスティング、計算資源、企業向けツールを提供するという関係です。
つまりQwenは、クラウドの一機能にとどまらず、アリババのサービス全体へ顧客を導く販売チャネルであり、単独でも収益化を目指す製品として位置づけられています。
アリババのAI戦略をめぐっては、異なる四半期の数字が混在して語られがちです。
その後の2027年度第1四半期では、次のような数字が報告されています。
AIが社内研究のテーマにとどまらず、クラウドの商用売上として表れ始めた点は明確です。ただし、AI関連売上の伸びだけでは、その事業がすでに利益を生んでいるとは言えません。
アリババはQwenについて、オープンウェイトで広く配布しながら、大規模な商用利用から収益を得る仕組みを検討していると報じられています。
Reutersによると、今後のQwenモデルを使って製品やサービスを展開する大口商用ユーザーに対し、その事業で生じた収益に応じた契約を求める計画です。モデル自体は幅広く配布する一方、特に大規模な商用展開には追加条件を設ける可能性があります。
ただし、報道時点では、収益分配率、適用される売上規模、ライセンスの詳細は確定していません。したがって、これは公開済みの最終料金表ではなく、Qwenの商業的価値を収益化しようとする計画の段階です。
アリババが想定する収益化の道筋は、主に2つあります。
この仕組みが利用拡大を促すのか、それとも大口ユーザーを慎重にさせるのかは、最終的な契約条件次第です。
今回の再編が注目されるもう一つの理由は、2023年の組織改革とは方向性が異なることです。
2023年の6事業グループ体制は、各事業の独立性、財務責任、将来的な個別上場を重視していました。特にクラウド事業の分離上場構想は象徴的でしたが、後に取り下げられました。
今回の改革では、アリババが戦略上不可欠とみなす技術を再び近づけています。チップ、クラウド、モデル、アプリケーションを別々に管理するのではなく、研究開発から商用化までを一つのシステムとして扱おうとしています。
狙いは、ハードウェアとソフトウェアの共同設計、AIインフラの稼働効率向上、そしてQwenの利用をクラウド売上へつなげる経路の明確化です。ただし、組織を統合しただけで競争優位が生まれるわけではありません。顧客の採用、クラウド利益率、モデル利用、インフラ投資の回収実績によって検証される経営上の仮説です。
しかし、利益面は大きく悪化しました。純利益は約75%減の約105億元となり、調整後1株利益は1.26ドルと報じられています。AIインフラ、技術開発、関連施策への支出増加により、調整後EBITAも減少しました。
アリババは、AIおよびクラウドインフラに関する従来の3年間・3800億元規模の投資計画を上回る見通しを示しています。クラウド需要が強くても、短期的な利益やキャッシュフローに懸念が残る理由はここにあります。
2027年度第1四半期から読み取れる最も明確なメッセージは、アリババがAI事業の収益性をすでに証明したということではありません。収益性を築くために必要だと考える条件へ、経営資源を意図的に振り向けているということです。
その代償は財務諸表に表れています。クラウドとAIの需要は加速していますが、その需要に対応するサーバー、チップ、モデル開発、計算容量への投資が、当面の利益とキャッシュ創出力を押し下げています。
今後、投資家が確認したいのは、単にモデルの利用者数が増えることではありません。AI関連売上が、それを支えるインフラ費用より速く拡大し、最終的に持続的な利益へ転換できるかどうかです。
なお、6カ月間でQwenのダウンロード数が30億件を超えたとの主張や、香港上場株が四半期で36%上昇したとの数字は、今回利用できた情報源から独立して確認できなかったため、戦略の成功を示す確定的な証拠としては扱いません。