AMDが示す代表的なシナリオでは、2030年のAMD製ラック2台が、2024年のInstinct MI300Xベースのラック570台と同等のAI処理能力を提供できるとされています。 同じワークロードを20分の1の電力で処理できれば、同等の計算量に対する電力使用量は95%削減されます。
AMDが以前掲げた「30x25」は、CPUとGPUを組み合わせたノード単位の効率を、2020年から2025年にかけて30倍にする取り組みでした。AMDはこの目標を上回り、ノードレベルで38倍の改善を達成したと説明しています。これは、同じ性能を得るためのエネルギー使用量を97%削減したことに相当します。
今回の20x2030では、評価対象がノードからラックへ広がります。アクセラレーターやCPUだけでなく、HBMなどのメモリー、ラック内外のネットワーク、電源・冷却に伴うオーバーヘッド、さらにソフトウェアによるハードウェア利用率まで含めて効率を捉える考え方です。
AIシステムでは、カタログ上のFLOPSが高いだけでは、実際のトレーニングや推論を低電力で完了できるとは限りません。重要なのは、計算、データ移動、通信、メモリー待ち、スケジューリングを含めたシステム全体の効率です。
AMDが想定する主な技術的要因は次の通りです。
こうした要素を同時に設計することが、ラック単位の性能対電力、すなわち「完了したAI処理あたりの電力」を下げる鍵になります。
AMDの仕様では、FP4で最大2.9エクサFLOPS、FP8で最大1.4エクサFLOPSの演算性能を掲げています。 Heliosは、GPUやCPUを個別に販売するだけでなく、演算、メモリー、ネットワーク、冷却などを統合したラックとして提供する構想です。
AMDは2026年7月時点でHeliosがフル生産に入っており、初回出荷は2026年第3四半期末、その後に出荷規模を拡大すると説明しています。 利用可能な資料からは、2027年の具体的な生産マイルストーンまでは確認できません。そのため「2026~2027年の本格展開」といった表現は、確定した日程というより、今後の拡大見通しとして扱うのが適切です。
Heliosは、AMDがAIアクセラレーター単体ではなく、統合ラックそのものでNVIDIAに挑む試みです。AMDは、NVIDIAのVera Rubin NVL72ラックと比べ、HeliosはピークFP4演算性能で最大15%、HBM容量で50%、スケールアウト帯域で50%上回ると主張しています。
これらはAMDによる比較であり、独立した第三者ベンチマークではありません。実際の性能や電力効率は、モデル、精度、ソフトウェア、冷却方式、運用条件などによって変わります。
AMDのデータセンター事業は、AI向け設備投資の拡大を背景に急成長しています。2026年第2四半期のデータセンター売上高は67億ドルで、前年同期比107%増だったと報じられています。 ただし、この部門の売上にはEPYCサーバーCPUとInstinctアクセラレーターの双方が含まれるため、数字をそのままAI GPU専用の売上とみなすことはできません。
NVIDIAの資金調達・販売金融の戦略や、GoogleのTPUシステム関連売上については、今回利用できる資料だけでは信頼できる規模や内容を確認できません。これらは競争環境を考えるうえで重要な論点ですが、別途裏付けのある報道なしに事実として断定することはできません。
AMDの発表が示すのは、AIの性能競争が「より多くの演算能力」だけでなく、「限られた電力とデータセンター容量から、どれだけ多くの処理を引き出せるか」という競争へ移っていることです。4倍という2026年の推計が、2030年の20倍という目標にどこまでつながるかは、Heliosの実運用データと、今後のソフトウェア・システム最適化によって検証されることになります。