注目すべきなのは、検出数の多さだけではない。結果に関する報道では、従来の自動解析が得意としてきたメモリ破壊系のバグだけでなく、意味論的な欠陥やロジック上の不備が多数含まれていたとされる。アクセス制御、パス処理、サーバーサイドリクエスト、コードインジェクション対策など、アプリケーションが本来どう動くべきかを理解しなければ見つけにくい問題も対象になる。
ただし、ここでも数値はベンダーによる報告だ。「未知」とされることだけで、すべてが実際に悪用可能なゼロデイだと証明されるわけではない。深刻度の分類も、採用する評価基準によって変わり得る。より慎重な結論は、複数のモデルを組み合わせたエージェントシステムが、従来のレビュー工程では調べきれないほど大量のセキュリティ上の候補を、従来より速く見つけられるようになっているということだ。
脆弱性の発見が速くなれば、防御側の調査能力は高まる。しかし、組織の修正サイクルが遅いままなら、危機が拡大する可能性もある。CERT-EUは、新たに公開された脆弱性が悪用されるまでの平均時間(mean time to exploit)が マイナス7日 になったとの推計を紹介している。これは、広く利用可能なパッチが出る前に悪用が始まる場合があるという意味だ。
この指標は、パッチの位置づけを変える。コードを恒久的に修正することは依然として不可欠だが、それが最初に取るべき、あるいは唯一の有効な防御策とは限らない。開発者が原因を調べ、テストし、情報開示を調整し、段階的に展開する間も、セキュリティチームはシステムの露出を抑える必要がある。
Palo Alto Networksの Frontier AI Critical Defense Program は、AI研究機関、ソフトウェア企業、オープンソース関係者に加え、運用技術(OT)や医療などの分野を連携させる取り組みだ。提案されているのは、恒久的なソフトウェア修正が利用可能になる前に、ネットワークレベルの「仮想パッチ」を展開し、攻撃トラフィックや悪用されたプロトコルの挙動を遮断することだ。
同社は、Advanced Virtual Patchingによって数時間で防御策を展開できるとしている。従来型パッチの展開にかかる業界平均として同社が示す55日と比べ、露出期間を大幅に短縮する狙いだ。
もっとも、仮想パッチは脆弱なコードの修正そのものではなく、あくまで補完的な防御策だ。効果は、攻撃経路を正確に特定できるか、その経路をネットワーク制御で遮断できるか、正規の通信や業務を妨げずに運用できるかに左右される。信頼済みの経路、暗号化通信、ローカルでの権限昇格、通常の利用と区別しにくい挙動を使う攻撃では、カバーできる範囲が限られることもある。
可能性はある。ただし、AIスキャナーを追加するだけでは不十分だ。
AVDHとNOVAが示す、より有望な防御の流れは次のようになる。
ここから得られる戦略上の教訓は、優位性を生むのはAIモデルの出力そのものではなく、各工程のオーケストレーションだということだ。AIは発見と検証を圧縮できる。しかし防御側には、信頼できる証拠、慎重な優先順位付け、復元力のある設計、そして同じ速度で対策を展開できる運用基盤が必要になる。
攻撃者も同等のモデルを利用できる可能性があり、仮想パッチも一時的で、適用範囲に依存する。現実的な目標は、ゼロデイのリスクをなくすことではない。発見から封じ込め、恒久修正に至る防御のループを、攻撃者が脆弱性を見つけて悪用するまでの経路より速く、かつ信頼性高く回すことだ。