GBD 2023の性別集計では、女性の割合は医師で43.9%にとどまる一方、看護師では80.7%、助産師では96.0%、地域保健ワーカーでは89.5%に達する。 これは、女性が医療を支える重要な担い手でありながら、意思決定やリーダーシップからは十分に恩恵を受けられていないという、職種間の分業構造を示している。
『The Lancet Public Health』に掲載された、世界疾病負担(GBD)2023に基づく分析は、UHCの実効カバレッジ指数で80点を達成するため、世界でさらに3,440万人の医療人材が必要だと推計した。
内訳は次の通りだ。
ここでいう「不足」は、単純な求人件数や将来の採用目標を示したものではない。UHC指数80点をすでに達成している国々で観測された医療人材密度を基準に、各国・地域にどれだけの人材が必要かをモデル化した推計である。そのため、すべての国に一律に適用できる厳密な採用ノルマではなく、一定の不確実性を伴う政策上のベンチマークと捉える必要がある。
先行するGBD分析では、UHC実効カバレッジ指数80点に必要な人口1万人当たりの最低密度を、医師20.7人、看護師・助産師70.6人、歯科医療従事者8.2人、薬剤師9.4人と推計していた。
一方、新しい分析では、更新されたデータと「UHC指数80点に達した国のうち、最も低い人材密度」を使う実証的な手法により、基準値はおおむね医師23.8人、看護師・助産師64.5人、歯科医療従事者5.2人、薬剤師5.6人となっている。
この違いは、推計の前提や利用データが異なるためだ。したがって、異なる研究の不足数を比較する際は、対象年、職種の範囲、目標とする医療サービス水準、算出方法をそろえなければならない。
地域別に見ると、南アジアでは不足する医師、看護師、助産師、歯科医療従事者、薬剤師の合計が約1,360万人と、絶対数で最大となる。 人口が多いため、人口当たりの不足だけでなく、必要な人材の総数も大きくなる。
一方、サハラ以南アフリカでは、地域保健ワーカーを除くほぼすべての職種で、2023年の人口当たり人材密度が最低水準だった。高所得国は多くの職種で最も高い密度を示している。
つまり、南アジアでは人口規模を背景とした「絶対数の不足」が、サハラ以南アフリカでは人口と医療ニーズに対する「供給密度の低さ」が特に深刻だ。世界全体の人数が増えただけでは、こうした地域差は解消しない。
WHOは、ニーズに基づく推計として、世界の医療人材不足が2013年の2,000万人から2020年には1,500万人に減り、2030年には1,000万人になると見込んでいた。
これに対し、GBD 2023分析の3,440万人という数字は、WHOの推計と直接比較できない。GBDの数字は、特定の医療職を対象に、UHC実効カバレッジ指数80点という目標に到達した国々の人材密度を基準としている。
両者の差は、どちらか一方が必ず誤っていることを意味しない。対象とする職種、必要性の定義、目標とするサービス水準、推計年、時間軸が異なるためだ。条件をそろえずに数字だけを比べると、実際の不足状況を誤って理解するおそれがある。
医師や看護師を増やすための教育と採用は不可欠だ。しかし、低賃金、安全でない職場、過重労働、雇用の不安定さ、昇進機会の乏しさが残れば、離職や国外流出が進み、投資の効果が失われる可能性がある。
必要なのは、次のような総合的な人材政策だ。
世界は1990年以降、8,000万人を超える医療人材を増やしてきた。その中心には女性の労働があった。しかし、地域間の偏在、投資不足、定着の弱さ、そして職種や組織内に残るジェンダー格差が、UHCに必要な医療提供能力の実現を妨げている。問われているのは、単に人材を増やすことではなく、誰がどのような条件で働き、誰が意思決定を担うのかを見直すことだ。
GBD 2023の性別集計では、女性の割合は医師で43.9%にとどまる一方、看護師では80.7%、助産師では96.0%、地域保健ワーカーでは89.5%に達する。 これは、女性が医療を支える重要な担い手でありながら、意思決定やリーダーシップからは十分に恩恵を受けられていないという、職種間の分業構造を示している。
『The Lancet Public Health』に掲載された、世界疾病負担(GBD)2023に基づく分析は、UHCの実効カバレッジ指数で80点を達成するため、世界でさらに3,440万人の医療人材が必要だと推計した。
内訳は次の通りだ。
ここでいう「不足」は、単純な求人件数や将来の採用目標を示したものではない。UHC指数80点をすでに達成している国々で観測された医療人材密度を基準に、各国・地域にどれだけの人材が必要かをモデル化した推計である。そのため、すべての国に一律に適用できる厳密な採用ノルマではなく、一定の不確実性を伴う政策上のベンチマークと捉える必要がある。
先行するGBD分析では、UHC実効カバレッジ指数80点に必要な人口1万人当たりの最低密度を、医師20.7人、看護師・助産師70.6人、歯科医療従事者8.2人、薬剤師9.4人と推計していた。
一方、新しい分析では、更新されたデータと「UHC指数80点に達した国のうち、最も低い人材密度」を使う実証的な手法により、基準値はおおむね医師23.8人、看護師・助産師64.5人、歯科医療従事者5.2人、薬剤師5.6人となっている。
この違いは、推計の前提や利用データが異なるためだ。したがって、異なる研究の不足数を比較する際は、対象年、職種の範囲、目標とする医療サービス水準、算出方法をそろえなければならない。
地域別に見ると、南アジアでは不足する医師、看護師、助産師、歯科医療従事者、薬剤師の合計が約1,360万人と、絶対数で最大となる。 人口が多いため、人口当たりの不足だけでなく、必要な人材の総数も大きくなる。
一方、サハラ以南アフリカでは、地域保健ワーカーを除くほぼすべての職種で、2023年の人口当たり人材密度が最低水準だった。高所得国は多くの職種で最も高い密度を示している。
つまり、南アジアでは人口規模を背景とした「絶対数の不足」が、サハラ以南アフリカでは人口と医療ニーズに対する「供給密度の低さ」が特に深刻だ。世界全体の人数が増えただけでは、こうした地域差は解消しない。
WHOは、ニーズに基づく推計として、世界の医療人材不足が2013年の2,000万人から2020年には1,500万人に減り、2030年には1,000万人になると見込んでいた。
これに対し、GBD 2023分析の3,440万人という数字は、WHOの推計と直接比較できない。GBDの数字は、特定の医療職を対象に、UHC実効カバレッジ指数80点という目標に到達した国々の人材密度を基準としている。
両者の差は、どちらか一方が必ず誤っていることを意味しない。対象とする職種、必要性の定義、目標とするサービス水準、推計年、時間軸が異なるためだ。条件をそろえずに数字だけを比べると、実際の不足状況を誤って理解するおそれがある。
医師や看護師を増やすための教育と採用は不可欠だ。しかし、低賃金、安全でない職場、過重労働、雇用の不安定さ、昇進機会の乏しさが残れば、離職や国外流出が進み、投資の効果が失われる可能性がある。
必要なのは、次のような総合的な人材政策だ。
世界は1990年以降、8,000万人を超える医療人材を増やしてきた。その中心には女性の労働があった。しかし、地域間の偏在、投資不足、定着の弱さ、そして職種や組織内に残るジェンダー格差が、UHCに必要な医療提供能力の実現を妨げている。問われているのは、単に人材を増やすことではなく、誰がどのような条件で働き、誰が意思決定を担うのかを見直すことだ。