つまり、この計画は単に地方に店舗を増やす政策ではありません。店舗の改修に加え、物流の改善、商品の多様化、サービスの充実、消費者が安心して購入できる環境づくりを一体で進める構想です。
この差を埋められれば、大都市では一般的になっている商品やサービスを地方の住民にも届けられます。これまで供給不足やアクセスの悪さによって抑えられていた需要が、実際の消費に転じる可能性があるという考え方です。
地方市場の開拓は、家計消費を経済成長のより重要な原動力にしたいという中国政府の方針とも一致します。4〜6月期には、製造業や輸出が比較的底堅かった一方、家計消費が弱く、成長のバランスの悪さが目立ちました。
ただし、県や農村の世帯がすぐに大規模な消費増をもたらすと見るのは早計です。新しい店舗やサービス、配送網が地域の需要に合うかどうか、また住民に十分な所得と消費マインドがあるかが成否を左右します。政府の表現でも、県域市場は短期的な効果が保証された対策というより、国内需要を上積みするための戦略的な潜在力と位置づけられています。
これは北京が景気支援を見送るという意味ではありません。承認済みの事業を早く実行し、消費や民間投資を対象を絞って支えることで、経済全体を対象にした大型パッケージを組まなくても下支えは可能です。県域消費の計画も、全国一律の信用拡大や不動産ブームに頼るのではなく、流通や消費のボトルネックに資源を振り向ける政策といえます。
金融政策にも慎重さが表れています。ロイターの調査では、25人の回答者全員が、8月の1年物・5年物ローンプライムレート(LPR)はそれぞれ3.00%、3.50%で据え置かれると予想しました。
今後の最大の焦点は、計画が現場でどこまで実行されるかです。地方政府が既存施設を改修し、チェーン小売企業やブランドを誘致し、配送網とサービスを改善した結果、実際の家計消費が増えるかが問われます。
同時に、需要の弱さが続いた場合、北京が承認済みインフラ投資の執行をさらに速めるのか、追加の対象限定策を打ち出すのかも注目されます。
7月の減速を受け、中国政府は経済への支援姿勢を強めています。ただ、その中心にあるのは、地方の小売・物流網を整えて消費の余地を引き出すことと、既存の財政手段を先に使うことです。大規模な景気刺激策に一気に踏み切るのではなく、県や小規模都市を含む国内市場を少しずつ掘り起こすのが、現在の北京の基本戦略です。