ただし、発表されているのは検査などで確認された患者数であり、感染者全体を網羅した数字ではない。WHOは、感染が強く持続していることに加え、既知の接触者リストに載っていない人からの発症や、治療施設ではなく地域社会で亡くなる人が多いことを問題視している。こうした状況は、まだ把握されていない感染経路が残っている可能性を示している。
今回の流行を引き起こしているのは、ブンディブギョウ・ウイルスだ。過去の複数の大規模流行で主な原因となったザイール・エボラウイルスとは、異なる種に分類される。
既存のエボラ対策製品は、別のエボラウイルス種を対象に開発・承認されたものだ。そのため現場では、迅速な診断、患者の隔離、感染予防・管理、そして水分補給などを含む集中的な支持療法が重要になる。候補ワクチンや治療法の評価は進められているが、研究中の候補があることと、承認済みで広く利用できる医療手段があることは同じではない。
エボラは、発症した人や亡くなった人の血液などの体液、またはそれらに汚染された物品との直接接触によって広がる。したがって、対策の基本は、感染者を早く見つけ、家庭、医療施設、地域社会での感染経路を断つことだ。
主な取り組みは次の通り。
自宅で療養する人が多かったり、診断前に死亡したりするケースでは、接触者の把握が難しくなる。治療の遅れは周囲への曝露を増やす可能性があり、遺体を安全に扱えない場合には、さらに感染が広がるリスクもある。
WHOと協力機関が対応する現場には、治安の悪化、避難民、遠隔地の集落、道路・河川・鉱山ルートに沿った激しい人口移動が存在する。国境をまたぐ人の移動もあり、誤情報や不信感が接触者追跡、医療機関への受診、安全な埋葬を妨げる可能性がある。
このため、公式統計が実際の感染と死亡の全体像を捉えきれていない可能性はある。ただし、隠れた感染者や死者が何人いるのか、正確な規模を示す根拠は現時点でない。医療施設の外で死亡する人の具体的な割合や、回復者が1,000人を超えるという情報も、更新された公式状況報告で確認されるまでは慎重に扱う必要がある。
WHOは、DRC国内および国外へのさらなる拡大リスクは高く、流行はまだ制御下にないと述べている。これは、現在の感染拡大が深刻であり、対応を急速に強化する必要があるという警告だ。海外への感染拡大が必ず起きるという予測ではない。
対応は、DRC当局がWHO、アフリカ疾病予防管理センター(Africa CDC)などと連携して進めている。監視体制、検査能力、接触者の追跡、医療機関の準備、物資の供給、院内感染対策、地域との対話を強化するとともに、周辺国でも国境を越えた流行への備えが進められている。
今回の流行の最大の難しさは、感染が急速に拡大する一方、原因ウイルスに対する承認済みワクチンや特異的治療薬がないことだ。見逃されている感染経路を特定し、地域住民が信頼できる情報と適切な医療に速やかにアクセスできるようになるまで、DRCのエボラ流行は国際的な公衆衛生上の重大な緊急事態であり続ける。