投資家にとってのリスクは、主に次の2つです。
現時点の報道から、ASMLがすでに大規模な受注を失ったと確認できるわけではありません。中国製装置の性能、量産規模、ASML製品との比較については、依然として不確実性が大きいとアナリストは指摘しています。
ASMLの第2四半期決算は、むしろ好調でした。売上高は93億ユーロ、粗利益率は54%。さらに、2026年通期の売上高見通しを従来の360億〜400億ユーロから430億〜450億ユーロへ引き上げ、通期の粗利益率見通しも54〜56%としました。
背景には、AI向け半導体を含む先端ロジックやメモリーの生産能力を増強する顧客からの強い需要があります。
しかし、好調な今四半期の数字は、数年先の競争環境を消すものではありません。企業の受注や利益が足元で伸びていても、将来の主要市場が競争激化や規制によって狭まると投資家が判断すれば、株価の評価倍率は低下することがあります。
今回の反応は、時間軸を分けると理解しやすくなります。
ASML株は、AIインフラと半導体製造装置への期待から、すでに高い評価を受けていました。そこへ新たな競争リスクが浮上すると、投資家は利益を確定したり、保有比率を下げたり、将来利益に対して支払う評価倍率を見直したりします。
半導体製造装置株全体の下落も、値動きを増幅した可能性があります。8月18日には、ASMインターナショナルやアプライド・マテリアルズなど、複数のテクノロジー・半導体関連銘柄も下落しました。ただし、これらの下落が中国懸念、利益確定、ポートフォリオの組み替え、セクター全体の弱さのどれによって、どの程度生じたのかを、提供された情報だけで正確に切り分けることはできません。
そのため、これらは株価下落を増幅した可能性のある要因として捉えるのが妥当です。
中国で「量産」が始まったという報道だけで、ASMLに代わる装置がすぐに幅広い商業生産で使えることが証明されたわけではありません。重要なのは、実際の半導体製造ラインで安定稼働できるかどうかです。具体的には、重ね合わせ精度、稼働率、歩留まり、保守・サービス体制、そして初期の少数生産から規模を拡大できるかが焦点になります。アナリストも、性能と量産能力を主要な不確実性として挙げています。
今後の注目点は次の通りです。
8月18日のASML株急落は、四半期業績への直接的な失望というより、長期的な成長率と株価評価の見直しと見るのが適切です。中国が液浸DUV装置の国産化を進めれば、輸出規制によって外国製装置へのアクセスが限られるなか、中国の半導体メーカーがASML製品の一部を置き換える可能性があります。
一方で、93億ユーロの第2四半期売上高、54%の粗利益率、430億〜450億ユーロへ引き上げられた2026年通期売上高見通しは、短期的な需要が依然として強いことを示しています。
つまり、市場が織り込んだのは「ASMLの業績が今すぐ崩れる」という見方ではありません。AI関連需要が現在の業績を押し上げる一方、中国のDUV自給化が将来の中国売上と成長余地を狭めるかもしれない――この2つの見方がぶつかったことが、好決算にもかかわらず株価が下落した理由です。