この許可の実務上のメリットは大きい。Momentaは今後、都市ごとに個別申請を繰り返すことなく、ドイツ国内で試験を進められる。また、欧州の厳格な規制環境の下でシステムを検証できるため、欧州展開に向けた技術的・制度的な実績づくりにもなる。
ただし、これは無条件の商用運行許可ではない。認められたのはあくまで試験であり、Momentaがドイツのあらゆる道路で直ちに無人の商用サービスを開始できることを意味しない。今後は、安全性の検証、地域ごとの運用要件、車両への統合、商用展開に必要な追加認可などが課題となる。
Momentaは香港での新規株式公開(IPO)を通じて、欧州を含む事業拡大に向けた資金も確保した。IPOでは、追加売り出し分を除き、約**59億香港ドル(約7億5,100万米ドル)**の調達を目指した。新たな資本、世界の自動車メーカーとのネットワーク、そしてドイツ全土での試験ルートがそろったことが、今回の認可を同社への評価材料として重要なものにしている。
Pony.aiの欧州戦略は、より直接的にロボタクシーの運行を見据えている。同社とUberは、欧州で2,000台超のPony.ai製ロボタクシーを展開する計画を発表した。既存のクロアチア・ザグレブでの商用サービスを起点に、欧州の追加4都市へ広げる構想だ。
ただし、追加される都市のすべてが公表されたわけではなく、展開完了の時期も示されていない。そのため、現時点で2,000台超がすでに稼働しているという意味ではなく、今後の展開計画と捉える必要がある。
役割分担は明確だ。Pony.aiがレベル4の自動運転技術と運行ノウハウを提供し、Uberが自社のモビリティプラットフォームを通じて利用者との接点を担う。
この方式なら、Pony.aiは国ごとに予約アプリ、利用者向けネットワーク、車両運用の仕組み、地域マーケットを一から構築せずに済む。Uberにとっても、自動運転システムの専門企業と組むことで、既存の配車サービスに自動運転車を組み込みやすくなる。
MomentaとPony.aiのアプローチは異なる。
共通しているのは、海外で通用することを示す「実績づくり」だ。Momentaは、世界の大手自動車メーカーと連携し、ドイツの監督下で高度な自動運転システムを試験できることを示そうとしている。Pony.aiは、中国発のレベル4技術が、欧州の複数市場で乗客向けサービスを支えられるかを試す。
欧州での実績は、企業に国際的な信用をもたらす可能性がある。一方で、現地の安全規則、データの取り扱い、事故時の責任、車両の保守・管理、世論や利用者の受け入れといった課題も浮き彫りにする。
したがって、1回の実証実験や提携発表だけで成功が決まるわけではない。継続的で安定した商用運行を実現できるかどうかが、より重要な判断材料になる。
自動運転のレベル分類には、米国の自動車技術者協会(SAE)の枠組みが広く使われている。**レベル4は「高度自動運転」**で、運転システムが、定められた運行領域(ODD)の中で、運転操作全体とトラブル時の安全な対応を担う。
ODDとは、そのシステムが機能する前提となる範囲や条件のことだ。特定の都市、地図化された道路、時間帯、天候、速度、運行エリアなどによって制限される場合がある。その範囲内では、人間のドライバーが常に監視し、運転を引き継ぐことを前提としない。
ただし、レベル4だからといって、車両がどこでも走行できるわけではない。今回の動きでは、次のように理解すると分かりやすい。
Momentaのドイツでの試験許可も、Pony.aiとUberの欧州展開計画も、レベル5を主張するものではない。両社が目指しているのは、厳密に定義された条件の中で高度な自動運転を実用化することだ。人間の運転を場所や条件を問わず置き換える、無制限の自動運転とは区別する必要がある。
ドイツ銀行によるMomentaへの「買い」判断は、無人運転車への期待だけを反映したものではない。独立系都市型NOAでの市場ポジション、世界の自動車メーカーとの関係、香港IPOによる資金、そしてドイツ全土でのレベル4試験認可を組み合わせた評価だ。
一方、Pony.aiとUberの提携は、既存のモビリティプラットフォームを使ってレベル4ロボタクシーを複数都市へ広げる別の道筋を示している。
より大きな意味では、中国の自動運転企業が、技術そのものだけでなく、量産車への組み込み方や、ロボタクシーを運行するビジネスモデルまで海外に展開しようとしている。欧州はその実力を証明する舞台になりつつあるが、同時に、安全性、規制、現場の信頼性という高いハードルに直面する試験場でもある。