8月のRWA.xyzのスナップショットでは、発行残高の首位はOndoで約8億7,300万ドル。続いてxStocksが約5億5,600万ドル、BinanceのbStocksが約4億8,100万ドルとなった。 一方、別の8月時点の推計ではbStocksがxStocksを上回っており、新規供給が市場に流入するにつれて順位が急速に変動していたことを示している。
Ondo Stocksは、2025年9月のサービス開始から10カ月以内に、TVL(預け入れられた資産の総額)が10億1,000万ドルを超え、累計取引量は270億ドルに達したと発表した。この取引量には、中央集権型取引所、分散型取引所、発行時のミント・償還が含まれるため、単一の取引所におけるオンチェーン取引量と直接比較することはできない。
BinanceのbStocksは、流動性と販売網の面で急速に主要チャネルとなった。7月には、bStocksが報告されたトークン化株式の取引量の83.3%、金額にして94億1,000万ドルを占めた。その大部分はトークン化QQQによるものだった。 つまり、Binanceは取引活動で特に強く、Ondoは複数の市場スナップショットで発行残高の首位を維持していた、という違いがある。
xStocksは、オンチェーンでの保有者数と取引の広がりを武器とする競合モデルだ。過去の市場比較では、xStocksがOndoを保有者数と取引件数で上回った一方、TVLと累計の分散型取引所取引量ではOndoが優位だった。
Binanceの株式事業には、関連しながらも別個の2つの層がある。
通常の株式サービスでは、注文をNest Trading経由でAlpaca Securitiesに取り次ぐ。Alpacaが執行、清算、決済、カストディ、配当、コーポレートアクションを担い、Binance自身は証券を保管していないと説明している。
これとは別に、bStocksは米国株やETFをトークンで表現する商品だ。8月の製品アップデートでは、1分足から1カ月足までのK線チャート、横スクロール、パーセント表示・対数表示・反転表示、夜間データの表示切り替え、業績や利益率などの財務指標、株式移管機能が追加された。
移管機能には、米国の証券保管振替機関であるDepository Trust Company(DTC)のブローカー間移管プロセスが使われる。Binanceのサポート文書によれば、移管申請は平日の毎日バッチ処理で行われ、ブローカーの対応状況によっては完了まで少なくとも14営業日かかる。
こうした機能によって、従来の証券取引と暗号資産取引を一つの画面で扱えるように見える。しかし、通常の証券口座で保有する株式と、ブロックチェーン上のトークンとの法的な違いがなくなったわけではない。
「トークン化株式」という言葉は、実際には複数の仕組みを含んでいる。合成型トークンは、企業の公式な株主名簿に記録された株式を表すのではなく、株価への連動を提供する場合がある。暗号資産に対応した取引、少額からの分割的な投資、場合によっては継続的な取引を可能にする一方、保有者が議決権、直接的な配当、発行体からの情報を受ける権利、企業資産への請求権を持つとは限らない。
これとは異なるのが、発行体が関与する、法的にネイティブなモデルだ。SecuritizeやSuperstateなどは、トークンが法的に認められた株式を表し、規制対象の名義書換代理人の仕組みを通じて所有権が記録されるオンチェーン証券を目指している。商品や移転に適用される制限を前提に、配当や議決権といった権利を維持する設計だ。
米証券取引委員会(SEC)が2026年1月に示したポイントは明確だった。証券を暗号資産ネットワーク上で表現しても、米国の連邦証券法の対象から外れるわけではない。変わるのは所有記録を管理する技術であり、証券規制が一律に免除されるわけではない。
合成型やラッパー型の商品には、分かりやすい利点がある。国境を越えて販売しやすく、暗号資産に対応した決済を使え、従来の取引時間外にも売買でき、分散型金融(DeFi)アプリケーションと組み合わせられる可能性がある。こうした特徴は、流動性の集中とアクセスの拡大に寄与しうる。
一方で、アクセスのしやすさは法的な同等性と引き換えになることがある。仕組みによっては、保有者が直接の株主ではなく、仲介業者に対する契約上の請求権を持つにとどまる可能性がある。また、議決権、法定開示による保護、発行体への直接的な請求権がない場合もある。
法的に認められたオンチェーン株式は、より強固な所有権を提供できる。ただし、証券法、投資家の適格性、移転管理、コンプライアンスの枠組みのなかで運営しなければならない。規制されていない暗号資産取引と比べると、DeFiとの組み合わせやすさが低下し、流動性が分断される可能性もある。
2026年の市場拡大は、投資家が株式へのオンチェーンアクセスを求めていることを示した。時価総額は増加し、取引量は記録を更新し、トークン化株式はウォレットへの広がりが特に大きいRWA分野の一つとなった。
しかし、「トークン化株式」という名称だけでは、商品の本質は分からない。市場が最終的に選ぶのは、株価へのアクセスを広く提供するトークンなのか、それとも投資家と発行体の法的な関係を丸ごと維持する、ブロックチェーンネイティブの株式なのか。
今後、どのプラットフォームが長期的な金融インフラとして定着するかを決めるのは、市場規模やラベルではなく、トークンの保有者が何を所有し、どの権利を行使できるのかという点になりそうだ。