ブルームバーグによれば、ウォルター氏のファミリーオフィスが最近、売却の可能性についてクレアレイクに接触したという。一方、チェルシー側や関係者から正式な合意が発表されたわけではなく、代表者は公にコメントしていない。
クレアレイクは株式の過半数を保有しているため、数字だけを見ればすでにチェルシーの筆頭支配株主だ。しかし、2022年の買収時に組まれた独特のオーナーシップ契約により、実際のクラブ運営では、トッド・ボーリー氏が率いるグループと運営権やガバナンス上の権利を共有してきた。ボーリー氏は現在もクラブ会長を務めている。
そのため、ボーリー氏とウォルター氏がともに持ち分を手放すことになれば、単なる少数株式の売買では終わらない。クレアレイクと共同創業者のベフダド・エグバリ氏、ホセ・E・フェリシアーノ氏が、クラブの戦略やスポーツ部門に対して、より直接的な決定権を持つ可能性がある。
もっとも、具体的な権限配分は最終的な契約書やコンソーシアム内の合意によって決まる。株式比率が変われば自動的にすべての統治ルールが変わる、と断定することはできない。
今回の協議は、ボーリー氏側とクレアレイクの間で、クラブの運営方針をめぐる緊張が続いてきた時期に浮上した。報道によれば、両陣営は戦略面で衝突し、互いの持ち分を買い取る可能性を断続的に探ってきたという。
こうした経緯は、当事者がより単純な所有・運営体制を望む理由を考えるうえでの背景にはなる。しかし、競技成績が今回の売却協議を直接引き起こしたと証明するものではない。
ウォルター氏は、チェルシー以外の事業でも米国当局の調査に直面している。ブルームバーグは、ウォルター氏と関係のある2社の保険会社が大陪審の召喚状を受け、関連当事者間の投資や融資に関する潜在的な財務上の不正について、検察当局が調べていると報じた。
別の報道では、調査対象となっている関連当事者向け融資の規模は約210億ドルに上るとされ、証券取引委員会(SEC)も並行して調査しているという。
ただし、提供された報道の範囲では、ウォルター氏本人に対する起訴は確認されていない。調査中であることは、違法行為が認定されたことを意味しない。
この事情がウォルター氏のチェルシー株売却への関心を高めている可能性はあるものの、調査が売却協議のきっかけになったとする確かな因果関係は示されていない。確認できるのは、両者の時期が重なり、事業上の調査が続いているという点までだ。
ウォルター氏は、NBAのロサンゼルス・レイカーズの持ち分を、ボブ・アイガー氏とジョシュア・クシュナー氏に売却することで合意した。この取引の評価額は125億ドルと報じられており、ウォルター氏が同球団の買収に合意してから約14か月後の売却となった。
レイカーズ売却によって資金流動性が生まれることは、ウォルター氏の資産ポートフォリオを考えるうえで注目すべき材料だ。しかし、売却がチェルシー株の協議と関連していることを示す報道はない。現段階では、理由を裏付ける証拠ではなく、周辺事情として捉えるのが適切だ。
チェルシーの支配権に実質的な変更が生じる場合、プレミアリーグのオーナーおよび取締役適格性テスト(Owners’ and Directors’ Test)に基づく審査が必要になる。リーグには、資格を失う事由や支配権変更に関する判断を審査する独立監督パネル(Independent Oversight Panel)が設けられている。
このテストでは、失格につながり得る事由が追加されており、違法行為が認定された場合に該当する可能性のある行為について、人物が調査を受けている段階でもリーグが対応できると説明されている。
ただし、調査を受けていることだけで自動的にオーナー資格を失うわけではない。実際の事実関係、法的な結論、そしてリーグによる判断が重要になる。
現時点で最も確実に言えるのは、チェルシーがクレアレイクを中心とする、より集中した所有構造へ移行する可能性があるということだ。しかし、まだその段階には達していない。
ボーリー氏とウォルター氏の双方が保有株を売却すれば、クレアレイクの持ち分は約87%超となり、現在の「経済的な過半数」と「共同運営」が併存する体制は大きく変わる可能性がある。クラブ評価額は50億ポンド超と報じられている。
それでも、拘束力のある契約が発表されるまでは、これらはすべて起こり得る結果にすぎない。交渉がまとまらない、あるいは一方の株式だけが売却される可能性も残されている。