ウクライナ側や複数の報道で、次のような数字が示されている。
ただし、これらは報道された集計や推計であり、被害額を含めて独立監査済みの確定値ではない。23か所という数字が直接攻撃された施設だけを数えているのか、周辺被害や一時的な操業停止も含むのかも確認されていない。
さらに、ロシアが2026年最大規模と説明したドローン攻撃の最中には、モスクワ州ポドリスク近郊のコレジノ工業団地にあるWildberries施設で火災が発生したと報じられた。ロシア当局は従業員が避難し、施設で火災が起きたと説明したが、在庫の損失や建物の損傷規模は確定していない。
Wildberriesは衣料品や日用品などを扱う消費者向けの通販サイトだ。それでもウクライナは、同社が単なる小売企業ではなく、ロシアの物流と戦時経済の一部だと主張している。HURは、同社がロシアの物流における重要な役割を担い、戦争資金の供給にも関係していると説明した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領らは、Wildberriesの物流施設がロシア軍向けのドローン部品、航法機器などの軍事関連物資の供給に使われていると述べている。実際、同マーケットプレイス上では、ドローン部品や防弾装備など軍事関連の商品が扱われているとの報道がある。
一方、公開情報からは、Wildberriesがロシア国防省のインフラに組織的に組み込まれていることを示す証拠は確認されていないとの分析もある。争点は、幅広い商業物流網を、そこで扱われる一部の商品がロシアの戦争遂行を支えるという理由で、軍事的な供給網とみなせるかどうかにある。
Wildberriesが攻撃の象徴的な標的となった背景には、その規模がある。同社はモスクワ近郊のアパートで始まった家族経営の事業から、ロシア最大のオンライン小売企業へと成長した。現在では、同国の消費経済と物流を支える大きな存在とみられている。
創業者で最高経営責任者(CEO)のタチアナ・キム氏は、報道でロシアで最も裕福な女性と紹介されている。その企業規模と個人資産は、Wildberriesをロシアの経済力や一般市民の消費生活を象徴する存在にしている。
ウクライナにとっては、同社を攻撃することが、戦時経済を支えるとみなす商業・物流ネットワークを狙う意味を持つ。これに対してロシア当局とWildberries側は、攻撃対象は民間の商業施設であり、従業員、出品者、一般利用者に被害を及ぼしていると反論している。キム氏は倉庫への攻撃を、民間人や数百万人の利用者に影響を与える「テロ行為」と非難した。
両陣営の説明は大きく食い違っている。
ロシア当局は、特定の倉庫で死者や負傷者、火災、建物の損傷が発生したこと自体は認めている。しかし、Wildberriesを軍事物流施設とするウクライナ側の説明は否定している。現時点の公開情報だけでは、同社の物流網を通じて物資がどのように移動していたのか、個々の倉庫がロシア軍への供給に直接使われていたのかをすべて判断することはできない。
今回の話は、ウクライナ軍情報機関や政府関係者の発表に大きく依拠している。ロシア当局や現地メディアによる倉庫被害の報告もあるが、重要な点にはなお不明確さが残る。
Wildberries自身、または独立したサイバーセキュリティ調査・被害調査が詳細を示すまでは、今回のサイバー攻撃は「HURが主張した」と表現するのが適切だ。現時点でより明確なのは、ウクライナが大規模な通販・物流網をロシアの経済、さらには軍事関連インフラの一部として扱っていることだ。一方、モスクワとWildberriesは、攻撃によって被害を受けているのは民間の商業活動だと主張している。