ただし、K13の監視だけでは、ルメファントリンそのものへの耐性を示す検証済みの指標にはならない。PX1/PINは、K13では説明できない感受性低下を含め、アルテメテル・ルメファントリンへの反応が弱まりつつある原虫を追跡する候補マーカーになり得る。
もちろん、薬剤感受性に関わる遺伝子はPX1だけではない。例えば、pfmdr1遺伝子の増幅は、ルメファントリンやメフロキンへの感受性低下と関連してきた。今回の発見は、それとは別に、複数薬剤と関連しながら急速に選択・拡大しているゲノム上のシグナルを示した点に意義がある。
また、確認されたのは、患者から採取した原虫を用いた実験室試験での薬剤感受性低下だ。実際の患者で治療失敗がどの程度増えるのか、特にアルテミシニン併用療法の治療成績にどんな影響が出るのかを判断するには、臨床転帰の研究が必要になる。
さらに、今回の研究が示したのは強い選択シグナルと統計的な関連であり、5つの変化のうちどれが直接的な原因なのか、PX1がどのような仕組みで薬剤反応に影響するのかも確定していない。個別の変異を検証する機能研究が今後の課題だ。
標準的な投与で治癒しなかった帰国旅行者の事例を受け、米国の指針ではすでにアルテメテル・ルメファントリンの治療期間を長くする方向が示されていた。これは、薬剤感受性の低下を見逃さないための警告となる動きだ。
監視体制には、K13や既知のパートナー薬関連マーカーに加え、PX1/PINを組み込む必要がある。全ゲノム解析または標的解析による遺伝情報を、原虫の薬剤感受性試験や患者の治療結果と結びつけることが重要だ。