アルセロール・ミタル・クリヴィー・リフは、鉱山から製鉄までを一体化した大規模な鉱業・冶金複合施設だ。発電設備と高炉は、連続的に進む製鉄工程を支える中核であり、これらの損傷は単なる建物の被害にとどまらず、操業全体に波及しやすい。
両者の説明が食い違っているのは、製鉄所をどのように分類するか、またその産業上の役割が軍事目標としての正当性を持つのかが、攻撃をめぐる主要な争点になっているためだ。現時点で確認できる報道だけでは、ロシアが製鉄所を攻撃した具体的な戦略目的までは確定できない。
ゼレンスキー氏は、攻撃に先立つ1週間にロシアがウクライナに対して、およそ1,300機の攻撃ドローン、1,100発超の誘導航空爆弾、約100発のミサイルを発射したと述べた。これらは大統領による集計であり、独立して検証された総数ではない。
また、数日前には南東部ザポリージャのザポリシュスタリ製鉄所もロシアの攻撃を受け、従業員7人が死亡し、同工場は一時的に操業を停止した。ウクライナ側は北朝鮮から供給された弾道ミサイルが使われたと主張しているが、引用された報道ではその使用は独立に確認されていない。
同じ時間帯、ウクライナはモスクワ州に向けて大規模なドローン攻撃を行った。ロシア当局は少なくとも1人が死亡したと発表し、モスクワ州当局はポドリスクのワイルドベリーズ倉庫で、ドローンの攻撃による火災が発生したと報告した。
これらの死傷者や被害に関する情報はロシア当局の発表に基づくものであり、その点を踏まえて受け止める必要がある。双方がミサイルや長距離ドローンを使い、工業、物流、エネルギーに関係する施設を攻撃していることは示されるが、攻撃を受けたすべての場所の軍事的な目的や、各火災の原因が報告通りの兵器だったことまでを証明するものではない。
この一連の攻撃では、NATO加盟国のルーマニアにも直接的な空域上の影響が及んだ。ルーマニア国防省によると、モルドバ方面から同国の領空に侵入したドローンを、NATOの航空警備任務に就いていたスペイン空軍のF18戦闘機が、人口のない地域の上空で撃墜した。
ルーマニア側の初期発表では、ドローンの出所は特定されていない。したがって、この事案はウクライナ周辺での攻撃がNATO空域にリスクを及ぼし得ることを示す一方、ルーマニアを意図的に攻撃した証拠や、戦争が意図的に同国領内へ拡大したことを示すものではない。
クリヴィー・リフの製鉄所への攻撃が重要なのは、二つの意味である。第一に、主要な産業施設で死傷者が出ただけでなく、電力と高炉という操業の基盤が損傷し、生産が一部止まったこと。第二に、ウクライナの都市や工業施設へのロシアの攻撃、ロシア奥深くを狙うウクライナのドローン攻撃、そしてNATO加盟国に関わる空域侵入が、ほぼ同じ時期に起きたことだ。
確認できる証拠からは、戦争が前線だけでなく、産業・エネルギー基盤と長距離ドローンの領域へ広がっていると慎重に結論づけられる。ただし、製鉄所への攻撃の正確な戦略目的、生産停止が続く期間、ルーマニアで撃墜されたドローンの出所については、今後の追加情報を待つ必要がある。