プログラムの主要説明では、計算による候補探索を500倍加速する目標が示されている。一方、「約5倍速く、安価になる」という表現は別の開発指標を指す可能性があるため、同じ成果として断定するには注意が必要だ。
AIがソフトウェアを書くようになるほど、そのコードが本当に正しいのかを確かめる仕組みが重要になる。NUSとインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究では、プログラムの構造を推論し、自動分析、テスト、形式検証、正しさの証明を行うツールを開発する。
同時に、仕様書が整備されていない既存コードを解釈するため、より柔軟な推論も利用する。ネットワークプロトコルやLinuxカーネルの構成要素など、障害の影響が大きいソフトウェアで検証し、あるAIが書いたコードを別のAIエージェントが監査できるようにすることを目指す。
生命科学では、データを種類ごとに分断して扱うのではなく、複数の層を同時に解釈する方向が打ち出されている。NUSとA*STARによる「MultiOmicsFM」は、シンガポールの多民族データセットを用い、DNA、RNA、遺伝子活動のデータを統合して扱う基盤モデルを計画する。疾病リスクの研究や、mRNA治療の最適化が応用先となる。
別の「BloodCounts!」プロジェクトでは、通常の全血球計算(CBC、シンガポールや英国ではFBCとも呼ばれる)の生データを構成する全パラメーターに、血液塗抹標本の画像を加えて「DeepCBC」モデルを訓練する。身近な血液検査からより多くの診断情報を引き出し、脳卒中やがんリスクなどの状態の予測を支援する狙いだ。
NUSとイリノイ大学のARCSプロジェクトは、知識に基づく農業デジタルツインを構築する。デジタルツインとは、現実の農地をデータ上に再現する仕組みで、東南アジアの農地に関する観測データと、作物科学の原理を組み合わせる。
8つのプロジェクトには、エネルギー輸送を改善するAI設計インターフェースも含まれる。材料、触媒、ゲノム、ソフトウェア、農業、血液分析、エネルギーなどにまたがる構成で、AI4Sを単一産業向けの取り組みではなく、複数分野を横断する研究基盤として位置付けている。
AI4Sの戦略は、大きく3点に整理できる。
AI4Sの本当の評価は、モデルがどれだけ速く予測できるかでは決まらない。再現可能な製造手順、実用的な触媒、臨床的価値を裏付ける医療データ、信頼できるソフトウェアといった、検証済みで拡張可能な成果を生み出せるかどうかが、今後の焦点となる。