結論:市場は「供給が止まるかもしれない」リスクを先に織り込んだ
原油市場では、実際に最悪の供給途絶が起きたかどうかよりも、その可能性が高まったことが重視された。ホルムズ海峡を通る船舶への攻撃、米国とイランの停戦協議の停滞、米国による海上封鎖の長期化示唆、対イラン制裁強化の観測、さらにロシアの輸出拠点への攻撃が重なり、現物の原油や液化天然ガス(LNG)が届かなくなるリスクが意識された。
その結果、国際指標のブレント原油は週間で約6%上昇し、1バレル=88.52ドルで終了。米国の指標であるWTI原油も5.4%上昇し、82.40ドルとなった。![]()
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ホルムズ海峡が供給不安の中心に
ホルムズ海峡は、中東産エネルギーの海上輸送における重要な「 chokepoint(チョークポイント、要衝となる狭い通路)」だ。戦争前には、原油と石油製品が日量約2,000万バレル通過していたが、現在の流れはごくわずかな水準まで落ち込んでいるという。代替パイプラインの輸送能力も限られている。![]()
国際エネルギー機関(IEA)は、貯蔵施設が埋まり、海峡を迂回する手段も十分でないことから、湾岸諸国が生産を大幅に削減したと説明している。輸送の停滞が長引けば、単なる航路の問題ではなく、実際の生産量の減少へ波及する可能性がある。
停戦の不透明感が「長期化リスク」を高めた
アブダビ国営石油会社(ADNOC)の船舶2隻への攻撃、米国とイランの停戦協議の行き詰まり、米海軍による封鎖が「無期限」に続く可能性、対イラン経済制裁の強化観測、レバノンでのイスラエルによる攻撃再開などは、混乱が短期間で収束しないとの見方を強めた。
米財務長官のスコット・ベッセント氏が、イランに対する前例のない経済的孤立策の可能性に言及したことも、輸出制限が強まるとの警戒につながった。![]()
供給を確保したい製油会社やトレーダーは、目先に受け渡される原油を通常より高い価格で買おうとする。こうした買いが、将来の供給不足を見越した「地政学的リスクプレミアム」として価格に反映された。
ロシアの輸出障害で懸念が中東以外にも拡大
ウクライナのドローン攻撃により、ロシアの主要輸出拠点ノヴォロシースクからの原油輸出にも混乱が生じた。これにより市場の懸念は湾岸地域だけにとどまらず、複数の地域で同時に輸出が滞る可能性へ広がった。
特に、ブレント連動価格の影響を受けやすい欧州の買い手にとって、海上輸送される原油の供給が同時に細ることは、調達リスクを高める材料となった。
それでも価格の急騰が抑えられた理由
供給不安が強まる一方で、需要の弱さを示すデータも相次いだ。
- 米国の原油在庫が予想外に増加:米国の商業原油在庫は1,740万バレル増えた。市場が在庫取り崩しを予想していたなかでの大幅な積み増しは、米国内の短期的な現物需要が逼迫していないことを示した。