通航の急減とジャザン製油所への攻撃を受け、原油市場では供給途絶への警戒が強まりました。8月9日、北海ブレント原油先物は4.17ドル、約5%上昇し、1バレル=87.72ドルで取引を終えました。米国産WTIも3.95ドル、約5.1%上昇して82.13ドルとなりました。
その後の価格上昇が限定的だったのは、市場が当面のリスクをすでにある程度織り込んでいたためと考えられます。また、一部の船舶が航行を続け、備蓄や代替ルートによって供給が完全には途絶えていないとの見方もあります。
もっとも、これは危険が解消したことを意味しません。封鎖が長引いたり、攻撃対象が広がったりすれば、原油価格がさらに急騰する可能性があります。実際、イランが海峡の閉鎖継続を示した後、ブレントは8月11日に1.4%上昇し、88.91ドルで終了しました。
ホルムズ海峡は、かつて世界の海上原油・LNG貿易のおよそ5分の1が通過する要衝でした。そのため、長期的な混乱は湾岸産油国の輸出を制限するだけでなく、次のようなコストを押し上げます。
米国のトランプ大統領が国民に、ガソリン価格の一定の上昇を受け入れるよう呼びかけたことは、今回の混乱が国内の生活コストにも直結することを示しています。輸入への依存度が高い国では、エネルギー価格の上昇が景気をさらに押し下げる可能性があります。報道では、フィリピンの2026年成長率見通しが大幅に下方修正されるリスクも指摘されています。
短期間の混乱であれば、各国は在庫の取り崩しや輸送ルートの変更によって影響をある程度吸収できます。しかし、封鎖が長期化すれば、単なる海運問題ではなく、インフレと景気減速が同時に進む世界的な経済ショックになりかねません。
米国側は海上封鎖を長期間維持できると主張し、イラン側は航行再開の条件として米国の譲歩を求めていると報じられています。交渉が進まない現状では、すぐに通常の航行へ戻る確かな見通しはありません。
今後の原油価格と世界の物流を左右するのは、攻撃の有無だけではなく、ホルムズ海峡の異常な状態がどれだけ続くかです。