超周辺衝突とは、鉛原子核同士が直接衝突することなく、ごく接近してすれ違う現象。このとき、一方の原子核が持つ強力な電磁場が、あたかも光子ビームのように機能し、もう一方の原子核内部のグルーオン構造をプローブするための理想的なツールとなる。
研究者たちは、この光子-原子核相互作用で生成されるJ/ψ中間子(チャームクォークと反チャームクォークからなる粒子)の生成パターンを詳細に分析。これにより、原子核内部におけるグルーオンの空間分布と密度を、極めて小さな長さスケールでマッピングすることに成功した。特に、相互作用エネルギーと運動量移動の両方の関数として測定した点が、従来にない画期的な点である。
本研究の鍵となったのは、その解像度の高さである。データに含まれる運動量移動を解析することで、ALICEチームはわずか0.2フェムトメートル(fm) という微細な構造を捉えることに成功した。これは、陽子1個の大きさのおよそ10分の1に相当する。原子核内のグルーオン分布に対して適用された解像度としては、歴代最高である。
「ALICEは、0.6fm、0.3fm、そして0.2fmと解像度を段階的に上げながら、原子核内部のより小さな領域を徐々にプローブしていきました」と、本研究を主導したカンザス大学の核物理学者、ダニエル・タピア・タカキ(Daniel Tapia Takaki) 氏は説明する。この階段状のアプローチにより、チームは「ズームイン」するにつれてグルーオンの振る舞いがどのように変化するかを克明に観察することができた。
結果を解釈するため、チームは測定値を2つの競合する理論モデルと比較した。
分析の結果、ALICEのデータは従来の核シャドウイングの描像よりも、グルーオン飽和モデルを強く支持することが明らかになった。これは、1970年代以来、原子核グルーオン効果の標準的な説明とされてきたシャドウイングの枠組みに根本的な疑問を投げかける結果である。
本研究は、2026年8月付で権威ある科学誌 『Physical Review Letters』 に掲載された。使用されたデータは、LHCの第2期運転(Run 2:2015~2018年) 中に収集されたものである。ALICE共同研究グループは世界中の数十の研究機関から成り、今回の解析はタピア・タカキ氏率いるカンザス大学のグループが中心となって主導した。
この成果が重要な理由は、グルーオンが通常の物質の質量と結合エネルギーの大部分を支配しているからに他ならない。高密度状態でのグルーオンの振る舞いを理解することは、強い力の完全な理論(量子色力学、QCD)を構築するために不可欠であり、今後計画されている米国の電子-イオン衝突型加速器(EIC)を含む、幅広い原子核・素粒子物理学実験の解釈に直結する。
もしグルーオン飽和が確定すれば、それは物質の新しい状態――これまで観測されたことのない、グルーオンが集団的に振る舞う高密度状態――の発見を意味する。ALICEの今回の結果は、この相(フェーズ)が高エネルギー下の原子核内部に存在することを示す、最も強力な実験的証拠である。
超周辺衝突とは、鉛原子核同士が直接衝突することなく、ごく接近してすれ違う現象。このとき、一方の原子核が持つ強力な電磁場が、あたかも光子ビームのように機能し、もう一方の原子核内部のグルーオン構造をプローブするための理想的なツールとなる。
研究者たちは、この光子-原子核相互作用で生成されるJ/ψ中間子(チャームクォークと反チャームクォークからなる粒子)の生成パターンを詳細に分析。これにより、原子核内部におけるグルーオンの空間分布と密度を、極めて小さな長さスケールでマッピングすることに成功した。特に、相互作用エネルギーと運動量移動の両方の関数として測定した点が、従来にない画期的な点である。
本研究の鍵となったのは、その解像度の高さである。データに含まれる運動量移動を解析することで、ALICEチームはわずか0.2フェムトメートル(fm) という微細な構造を捉えることに成功した。これは、陽子1個の大きさのおよそ10分の1に相当する。原子核内のグルーオン分布に対して適用された解像度としては、歴代最高である。
「ALICEは、0.6fm、0.3fm、そして0.2fmと解像度を段階的に上げながら、原子核内部のより小さな領域を徐々にプローブしていきました」と、本研究を主導したカンザス大学の核物理学者、ダニエル・タピア・タカキ(Daniel Tapia Takaki) 氏は説明する。この階段状のアプローチにより、チームは「ズームイン」するにつれてグルーオンの振る舞いがどのように変化するかを克明に観察することができた。
結果を解釈するため、チームは測定値を2つの競合する理論モデルと比較した。
分析の結果、ALICEのデータは従来の核シャドウイングの描像よりも、グルーオン飽和モデルを強く支持することが明らかになった。これは、1970年代以来、原子核グルーオン効果の標準的な説明とされてきたシャドウイングの枠組みに根本的な疑問を投げかける結果である。
本研究は、2026年8月付で権威ある科学誌 『Physical Review Letters』 に掲載された。使用されたデータは、LHCの第2期運転(Run 2:2015~2018年) 中に収集されたものである。ALICE共同研究グループは世界中の数十の研究機関から成り、今回の解析はタピア・タカキ氏率いるカンザス大学のグループが中心となって主導した。
この成果が重要な理由は、グルーオンが通常の物質の質量と結合エネルギーの大部分を支配しているからに他ならない。高密度状態でのグルーオンの振る舞いを理解することは、強い力の完全な理論(量子色力学、QCD)を構築するために不可欠であり、今後計画されている米国の電子-イオン衝突型加速器(EIC)を含む、幅広い原子核・素粒子物理学実験の解釈に直結する。
もしグルーオン飽和が確定すれば、それは物質の新しい状態――これまで観測されたことのない、グルーオンが集団的に振る舞う高密度状態――の発見を意味する。ALICEの今回の結果は、この相(フェーズ)が高エネルギー下の原子核内部に存在することを示す、最も強力な実験的証拠である。