インサイダー優位への規制の傾斜:NBIMは、新しいルールが長期投資家である独立株主を犠牲にして、創業者や支配株主に利益をもたらすように設計されていると指摘。この傾向は特定の地域に限らず、複数の主要市場で見られると警告しています。
NBIMのCEO、ニコライ・タンゲン氏は、この変化の背後にある主要な原動力として、株式市場間の強力な競争メカニズムを挙げています。世界中の証券取引所が、注目度の高いIPO(新規株式公開)の上場を誘致するため、ガバナンスや議決権に関する基準を緩和しているのです。この「底辺への競争」が、株主保護を全体的に弱体化させています。
象徴的な事例としてのSpaceXのIPO:タンゲンCEOは、SpaceXのIPOをこの傾向の具体的な例として直接言及しました。同基金によれば、SpaceXは創業者イーロン・マスク氏に事実上無制限の経営権限を与え、一般的な株主保護を現代では前例のない方法で制限するガバナンス体制を採用しています。マスク氏はSpaceXの議決権の80%超を掌握しており、同基金はこの異常な権力集中を他の企業への警告信号と見なしています
。
NBIMは警鐘を鳴らすだけでなく、少数株主を保護し市場の健全性を維持するために必要だと考える具体的な政策上の安全策を提案しています。
二重株式構造へのサンセット条項の義務化:NBIMは、優越議決権が設定された期間の経過後に自動的に失効する、時間制限付きのサンセット条項を義務付けるよう求めています。これにより、創業者による支配が永久に固定化されるのを防ぎ、その構造が依然として株主の利益に資するものかを定期的に見直すことが可能になります。
株式クラス別の議決結果開示の強化:NBIMは、企業に対し、株式クラスごとに議決結果を分解して公開することを義務付けるよう支持しています。これにより、投資家は委任状投票の背後にある真の市場シグナルを確認できるようになります。現在、米国SEC(証券取引委員会)のルールは、このような分解開示を義務付けていません。
取引所、規制当局、企業への直接的な働きかけ:同基金は、証券取引所や規制当局、個別企業に対して、より強固なガバナンス基準の採用を積極的に働きかけています。また、注目度の高い上場を獲得するために株主の権利を弱体化させる圧力に抵抗するよう求めています。
NBIMは世界最大のソブリン・ウェルス・ファンドであり、ノルウェーの石油・ガス収入を運用して世界中の多様なポートフォリオに投資しています。その規模ゆえに、全世界の市場を横断する独自の視点と、世界中のコーポレートガバナンス慣行に影響を与えるレバレッジ(影響力)を持っています。同基金の警告は単なる理論上の話ではなく、公開企業の支配方法や株主が権利を行使する方法を根本から変えつつある、実際に確認されたトレンドを反映したものです。