グリーンピースが提示した証拠は二段構えです。
また、これとは別に、2026年6月にはブルガリアの黒海沿岸(レゾヴォ、シネモレツ、ロゼネツ、アルクティノ、カムチア間)で燃料油による海岸汚染が多発。当局は「古い堆積物が荒天で攪拌されたもの」としていますが、環境専門家は影の艦艇の関与を指摘しています。
ブルガリア政府の対応は、否定と事実上の確認の間で揺れています。
「カイロス」はガンビア船籍の大型石油タンカー(全長274メートル)。ロシアがウクライナ侵攻後にG7の価格上限やEU・英国の禁輸を逃れるために利用する「影の艦隊」の一隻と特定され、EUと英国の制裁対象となっていました。制裁により、EU域内の港への入港や、保険・金融・運行支援などの広範な海事サービスが禁止されています。オープン・サンクションズの記録によると、同船は2023年11月以降、禁輸に違反してロシア産原油を第三国に輸出していました
。
2025年11月28日、ウクライナ保安庁(SBU)は、黒海のトルコ沖約28海里で、ロシア影の艦隊タンカー2隻(「カイロス」と「ヴィラト」)に対し、国産のSea Baby無人艇による同時攻撃を実施しました。
「カイロス」は当時バラスト(空荷)でロシアのノヴォロシースク港に向かっていましたが、攻撃を受けて火災が発生し、船体は大きな損傷を受けました。ウクライナは、ロシアの石油収入を断つための作戦の一環だと説明しています。
「カイロス」事件は、黒海から北極海に至る、はるかに大規模な地政学的・安全保障上の緊張の一部です。
西側の迎撃を避けるため、ロシアは**北極海航路(NSR)**の利用を急速に拡大しています。
2026年7月時点で、EUは671隻(2024年7月のわずか25隻から急増)、英国は621隻の影の艦隊船舶を制裁対象としています。しかし、執行は依然として不完全で、制裁後も135隻のタンカーがロシアの港で積荷を行っているとの報告もあります
。
総括:「カイロス」の運命は、ロシアのウクライナ戦争を資金面で支える影の艦隊と、それを阻止しようとするウクライナ・西側諸国との間の、激化する海洋での「見えない戦争」の縮図です。放置されたタンカーがもたらす環境リスクは、ブルガリアのようなNATO加盟国でも、制裁と安全保障の狭間で複雑な対応を迫られている現実を浮き彫りにしています。