回復を裏付ける根拠として、国際エネルギー機関(IEA)は、サウジアラビアの東西パイプライン(紅海のヤンブー港へ)、UAEのハブシャン・フジャイラパイプライン、イラクのITPパイプライン(トルコのジェイハンへ)という3つの主要な迂回ルート経由の輸出量が、戦前の日量400万バレル未満から720万バレルに増加したと報告している 。IMFも、湾岸諸国が代替輸出ルートを開発したことで、石油市場はホルムズ海峡の混乱に対する「変動性が低下した」と指摘
。APIのデータによれば、ヤンブーとフジャイラでの積み込み量は2026年3月以降急増し、2026年5月時点で日量約580万バレルと、戦前の2倍以上になっている
。
回復の楽観論に最も深刻な穴を開けるのがイラクの状況だ。イラクの原油供給量は2026年3月に前月比で日量300万バレル減少し、わずか160万バレルにまで落ち込んだ。これはホルムズ海峡の閉鎖により主要油田(南ルマイラ、西クルナ2、マイサン)の生産が停止し、貯蔵施設が満杯になったためである 。イラクの生産量は約80%削減され、5ヶ月足らずで50%以上も減少した
。2026年5月には日量148万バレルまで低下し、戦前の420万バレルからほぼ3分の1にまで落ち込んだ 。バグダッド政府は3年以内に日量700万バレルを目指すとしているが、戦争による損傷とインフラの制約から、アナリストの間ではこの目標達成は困難との見方が強い
。
政府の自信にあふれた発表とは裏腹に、データは多くの矛盾を露呈している。CNNは、ライト長官の主張は「目に見える船舶データによる裏付けがない」と報じた。石油市場分析会社Kplerの衛星画像と船舶トランスポンダー情報に基づくデータによれば、先週ホルムズ海峡を通過した船舶はわずか84隻で、日曜日に至っては9隻のみ。これは紛争前の日常的な100隻以上の通過数とは大きな隔たりがある 。
2026年6月には、シェブロンCEOのマイク・ワースが、ライト長官がそれ以前に発表した「代替ルート経由で日量700万バレルが流出している」という主張を公の場で否定。実際の数量はより少ないと主張した 。
IEAは、2026年6月初旬に「オマーン湾での船間積み替え(STS)によってホルムズ海峡経由の積荷が増加し、5月の低水準から持ち直した」と報告する一方、全体の原油輸出損失は日量1300万バレルを超え、3月だけで累積供給損失は3億6000万バレルを超えたと認めている 。
この改善が持続可能かどうかは、いくつかの未解決の要因に左右される。