既存の大手3社は、中国のどの競合も太刀打ちできない規模で生産設備への投資を続けている。TSMCは2026年7月、米国アリゾナ州への追加投資1,000億ドルを表明し、月間売上高は過去最高の4,170億台湾ドル(約131億7,000万米ドル)を記録した。同社の時価総額は約1.85兆ドルに達し、台湾の株式指標「加権指数(Taiex)」全体の40%以上を占めるに至っている。SKハイニックスは、HBM(高帯域メモリ)や先端メモリの製造設備に充てるため、米国での新株発行により最大360億ドルの資金調達を目指している。ASMLは、約450億ドルの受注残と53%の粗利益率を誇り、年間130億ドルのフリーキャッシュフローと120億ユーロの自社株買いプログラムを背景に、盤石の財務体力を持つ。
対照的に、中国最大のファウンドリであるSMIC(中芯国際)は、最先端から数世代遅れた7nm級の生産を、ASMLの旧世代のDUV(深紫外線)露光装置の多重露光技術に頼っており、能力格差は拡大する一方である。
| 技術領域 | 既存大手の立場 | 中国との格差 |
|---|---|---|
| 先端ロジック | TSMCが世界の最先端チップ(7nm以下)の約92%、AIトレーニング用チップの99%を生産 | SMICは7nm級を多重露光で生産するも、EUVへのアクセス無し |
| EUVリソグラフィー | ASMLがEUV露光装置を100%独占。西側にも競合は存在しない | 2026年7月に中国製DUV装置の報道があるが、性能・歩留まり・量産規模でASMLとは比較にならない |
| HBMメモリ | SKハイニックスがサムスン電子と共にAI向けHBMを席巻 | 中国のメモリメーカーCXMTはまだ黎明期 |
| 製造エコシステム | TSMCのプロセス制御・装置協調・パッケージング・歩留まり管理の統合システムは「世界で最も再現が困難」とされる | 中国のファウンドリに数十年の生産データと学習曲線の蓄積は無し |
| AI活用ファブ制御 | TSMCはスケジューリング、欠陥検出、プロセス最適化にAIを組み込み済み | 中国には大規模な工場レベルでのAI統合が不在 |
中でもASMLの地位は特に揺るぎない。ベイリー・ギフォード自身の分析によれば、「ASMLが西側に競合を持たないのと同じ理由で、しばらくの間、中国にも重要な競合は現れない。なぜなら、これは今日存在する最も複雑なツールだからだ」。2026年7月末、中国が国産DUV装置を開発したとの報道でASMLの株価は2日間で10%下落し、時価総額が600億ユーロ消失したが、アナリストらはその装置がASMLの性能と歩留まりに匹敵するには「長い道のりがある」と一貫して評価している。
AIブームは、前例のない地理的な市場価値の集中を生み出した。TSMC(約1.85兆ドル)はアジアで最も価値のある企業であり、加権指数の40%超を占める。SKハイニックスも2026年5月に時価総額1兆ドルの「兆ドルクラブ」入りを果たし、サムスン電子と合わせて韓国総合株価指数(KOSPI)の42%以上を占めるという歴史的な記録を打ち立てた。台湾の株式市場はインドを抜き、世界第5位の規模に浮上したが、その原動力はほぼTSMC一社である。このことは、これら3社の業績が台湾と韓国という二つの国家株式市場のパフォーマンスを直接左右するという、構造的な地政学的脆弱性でもあり、同時に強みでもある。
マクパデン氏の主張はリスクを認識しつつも、3社の「堀」は耐久性があると論じる。
中国も確かな進歩を遂げている。SMICは7nm級チップを生産し、メモリメーカーのCXMTは2026年8月に上海市場で上場初日に466%高を記録、国産DUV装置の開発も報じられた。しかし、アナリストらはこれらが最先端の水準では依然として大手3社に大きく及ばないと評価している。マクパデン氏の主張は、ロングオンリーのグロース運用マネージャーによる投資テーゼであり、本質的に既存大手に強気で、台湾封鎖や中国の飛躍的なリソグラフィー技術の躍進といった破壊的シナリオを過小評価している可能性がある点は認識しておくべきだろう。
マクパデン氏は、TSMC、SKハイニックス、ASMLが自己強化型の寡占の恩恵を受けていると論じる。即ち、桁外れの設備投資(TSMCの1,000億ドル、SKハイニックスの360億ドル調達)、拡大する技術格差(最先端チップの92%生産、100%のEUV独占、数十年のプロセスデータ)、更なる研究開発を可能にする兆ドルの時価総額、そして中国が不可欠なツールにアクセスするのを妨げる輸出規制である。台北タイムズの社説もこれを裏付けており、TSMCの製造システムを「議論の余地なく世界で最も複製が困難なもの」と評し、競合他社は「格差を縮めることがますます難しくなっていると感じ始めるかもしれない」と指摘している。これらの証拠は、地政学的なショックに対しては無敵ではないものの、これらの地位が構造的に強固であるという主張を強く支持している。