この警告は決して一社の悲観論ではない。OPPO、vivo、Honor、Xiaomi、そしてファーウェイ自身を含むほぼすべての中国大手スマホメーカーが、2026年中にすでに値上げを実施している。ミッドレンジモデルでは300~1,000元の値上げが一般的だ 。Xiaomi中国マーケティング責任者の魏思琪氏も「このメモリ価格高騰の規模とスピードは予想をはるかに超えていた」と認めている 。
世界のDRAM市場は、サムスン電子、SKハイニックス、マイクロン・テクノロジーの3社で約**96%**のシェアを占め、特にAI向け高帯域メモリ(HBM)に至っては事実上100%を支配している 。この3社が2027年に生産する予定のDRAMとHBMは、すでに全量が顧客と契約済みであり、新規購入者が割り込む余地はまったくない 。
AIサーバー向けHBMの需要が爆発的に拡大している。HBMは主要GPUの部品原価(BOM)の52~62%を占めるようになり、SKハイニックスはNVIDIAの主要サプライヤーとして第2四半期に**営業利益率76.3%**という驚異的な数字を記録した 。HBMは同社の収益の40%超を占め、全生産能力が2028年まで予約済みの状況だ 。このため、韓国勢にとって汎用DRAMの価格を下げるインセンティブはまったく存在しない 。
アップルは、次世代iPhoneの製造コストを抑えるため、中国のメモリメーカーCXMT(長鑫儲存技術)にLPDDR5XモバイルDRAMの値下げ交渉を持ちかけた。しかしCXMTはこれを拒否し、サムスンやSKハイニックスと同等かそれ以上の価格を要求した 。理由は、ファーウェイやXiaomiが長期契約でCXMTの生産能力をすでに確保しており、国内需要だけで生産が回っているからだ 。
2026年7月29日~30日、チャック・シューマー(民主党・ニューヨーク州) と ジム・バンクス(共和党・インディアナ州) を中心とする超党派の上院議員6名が、アップルCEOのティム・クック宛てに書簡を送付。国防総省が「中国軍事関連企業」に指定したCXMTおよびYMTCからのメモリチップ購入を断念するよう求め、8月21日までに文書で確約するよう要求した 。
下院の中国特別委員会も商務長官に対し、米国企業による中国メモリチップの購入を阻止するよう別途要請している 。
この政治的压力により、アップルは最後の逃げ道を失った。CXMTに安価なDRAMを頼ることは国家安保上の大問題に発展するリスクがあり、結局はサムスン・SKハイニックス・マイクロンの寡占供給網に縛られたまま、価格交渉力をまったく持てない立場に追い込まれている 。
メモリ価格高騰の影響は最終消費者に直接跳ね返る。2025年第4四半期にすでに40~50%上昇したメモリ価格は、2026年第1四半期にもさらに40~50%上昇。第2四半期も上昇傾向が続いており、Q2だけでDRAM価格が最大89%急騰したとの報告もある 。この結果、低価格帯スマホ(200ドル未満)のBOMは2025年初頭から25%増加、ミッドレンジ・上位モデルでも15%、10%の増加が見られる 。
OPPO、vivo、Honor、Xiaomiは2026年3月から値上げを開始。ファーウェイは当初Pura 90シリーズで踏みとどまったが、6月のnova 16シリーズでは300~500元の値上げを余儀なくされた 。7月1日からは全製品の価格調整を正式に発表している 。
CXMTからの調達ルートは価格面でも政治面でも事実上閉ざされた。HBMで巨額の利益を上げる韓国勢には値下げ圧力をかけられず、2027年まで供給逼迫が続く見通しのなか、アップルは他社と同等かそれ以上のコスト上昇に直面している 。
SKハイニックスは2026年第1四半期に営業利益率72%を記録し、年間利益でサムスンを初めて上回った 。HBM4の量産も順調で、2026年下半期にはさらなる収益拡大が見込まれる 。サムスンもHBM3Eの主要顧客認定取得とHBM4の本格供給でシェア回復を目指すが、いずれにせよ汎用DRAM価格を下げる動機はない 。
市場調査会社の予測によれば、メモリ供給の逼迫は少なくとも2027年まで続く可能性が高い 。HBM需要は2030年まで続くとの見方もあり 、スマートフォン業界全体が「メモリ高騰時代」に適応した価格戦略を迫られている。
余承東氏の「すべてのスマホが値上げされる」という警告は、単なる自社のコスト訴求ではなく、半導体業界の構造的転換を正確に言い当てたものといえる。