しかし、交通安全の専門家たちはこの「営業秘密」という主張に疑問を呈しています。評価の手法や判断基準を開示しても、システムの技術的な中核仕様を明らかにする必要はなく、公道で実際に運用されている運転支援システムがどのように安全と判断されたのか、市民には知る権利があると専門家は指摘します。
RDWは当初、FSDはテストコースと公道で18カ月にわたる試験走行を経て「重大な安全上の利点がある」と評価したと表明していました。さらに、オランダのカレマンス運輸相(当時)は議会で、FSD搭載テスラ車がオランダ国内で2400万マイル(約3860万キロメートル)を走行し、重大な事故は一件も発生していないと述べ、承認を擁護しています。しかし、これらの主張には衝突率の詳細な分析や独立したテストプロトコルなどの公開データは一切伴っておらず、その信頼性を外部が検証できない状況が続いています。
ロイターの報道に対し、ドイツ、ノルウェー、デンマークを含むEU加盟6カ国の規制当局は、RDWが承認の判断材料とした完全な安全性テストデータを自国では確認できていないか、あるいはデータの提供をRDWに求めていると回答しました。複数の国は、審査の根拠文書が非公開であるため、RDWの安全性に関する結論を独自に検証することが不可能だと述べています。
ノルウェー公共道路管理局は、独自の評価で検討したデータと、テスラが公表している安全統計との間に齟齬があると指摘しました。テスラはFSD搭載車は平均的なドライバーよりもはるかに事故に巻き込まれる確率が低いと主張していますが、ノルウェーの規制当局が実際に確認した生のインシデントデータとは一致しないと同局は報告しています。
EU全域でFSDを型式承認するか否かを決する投票が、早ければ2026年9月に実施される見通しです。欧州委員会の自動車技術委員会(TCMV)が、ブロック全体でのシステム承認にゴーサインを出すかどうかを決める重要な投票を行う予定です。
このように、テスラのFSDを巡っては、その安全性の根拠を巡りEU加盟国の間で意見が割れており、2026年秋のEU全体での投票結果が注目されます。