この夜間攻撃の中で、NATO加盟国であるリトアニアのキーウ大使館にも重大な被害が生じました。リトアニアのブドリス外相によると、2発のロシア製ミサイルが大使館の敷地からわずか5メートルと150メートルの地点に着弾。爆風で大使館の窓ガラスが割れ、屋上の太陽熱集熱器が損傷し、中庭にはがれきが散乱しました。幸いにも大使館職員に負傷者はなく、全員無事でした。
ウクライナ防空軍は、この攻撃で27発の弾道ミサイルのうち2発のみを迎撃し、185機のドローンのうち154機を撃墜しました。キーウ市内では18棟の住宅、1校の学校、そして医療搬送施設で救急車5台が破壊され、20台以上の車両が損傷するなど、広範囲に被害が及びました。
攻撃当日の8月1日、リトアニア外務省は在ビリニュス・ロシア大使館の代表者を召喚し、正式な抗議文を手交しました。抗議文では、1961年の「ウィーン外交関係条約」の重大な違反であると強く非難し、ロシアが「国際規範を一切尊重していない」と断じました。また、リトアニアは損害の評価を経て賠償を要求する権利を留保し、さらなる報復措置も辞さない構えを示しました。
ブドリス外相は8月4日、リトアニア国営放送LRTのインタビューで、ロシアに対する賠償請求の法的ルートを積極的に模索していると明言しました。同氏は「少なくとも理論上は、そのような法的メカニズムは存在する」と述べ、ウクライナ国内で生じた損害を評価・記録・回収するための国際的な損害登録簿(Damage Registry)がすでに設立され、リトアニアもこれに参加したと説明しました。
さらにブドリス外相は、NATOに対して「断固たる対応」を求める声を上げました。8月4日の談話で同氏は「冷静さを保ちつつも、断固として対応する必要がある」と述べ、NATOの軍事プレゼンスを強化し、より強力な政治的姿勢を取るべきだと主張しました。「これまでのNATOの抑止努力は効果的だったが、今回の事件を機に、まずは軍事能力の面で明確な対応を示すべきだ」と語っています。
ブドリス外相は、ロシアがリトアニア大使館を意図的に標的にした可能性について「排除できない」と述べています。その根拠として、大使館周辺には軍事施設や重要なインフラが存在しないことを挙げています。ロシアが繰り返し攻撃している最寄りの施設は、約1.5キロ離れた発電所のみだといいます。
しかし、同氏は8月5日にはLRTに対し「意図的な攻撃を示す証拠はない」と明言しており、確定的な判断は下していません。その上で「ロシアが国際法上、外交使節団の安全を確保する責任を負うことに変わりはない」と強調しています。
一部の情報源では、この攻撃にロシアの新型極超音速ミサイル「3M22 チルコン(Zircon)」が使用されたとされています。しかし、ロイター通信やNPRなど信頼性の高い一次情報源による報道では、大使館付近に着弾したミサイルの種類を特定していません。ユーザー生成の分析動画では、同日の攻撃全体に4発のチルコンまたはオーニクス(Onyx)対艦ミサイルが含まれていたとされていますが、大使館の損傷に直接関与したかどうかは不明です。
この大使館への攻撃は、それよりわずか2日前の7月30日に発生した別の重大事件と連続しています。同日、ロシアのKh-101巡航ミサイルがポーランド東部の村ザモシチ(Zamość)付近の領空を侵犯し、無人地帯に墜落しました。ポーランドはロシア大使を召喚して抗議し、NATOも「同盟領土防衛のために必要な全措置を取る」と表明しました。
これらの一連の事件は、ロシアがNATOの対応の閾値を探っているのではないかという懸念をバルト3国とポーランドの間で強めています。7月15日には、リトアニアのナウセダ大統領が、ロシアがバルト諸国またはポーランドの重要インフラを標的にした攻撃を計画している可能性があるとの情報があると警告していました。クレムリンはこれを「でっち上げの恐怖話」と一蹴しています。