こうした「非協力的飛行」は意図の曖昧さを生み、NATO戦闘機は目視確認と護衛のために緊急発進を余儀なくされる。NATO当局者は、これらは同盟の反応時間を試し、防空の隙を探り、国境沿いに持続的な脅威感を生み出すための、ロシアによる周到なキャンペーンだと指摘する。
NATO機は7月中、バルト海上で複数の迎撃を実施。各国国防省・NATO司令部が報告した主なものは以下の通り:
これらの7月のインシデントは、6月初旬にフランス軍機がバルト航空警備任務の一環として1週間で11回迎撃を実施していた前兆を経て発生している。
2026年初頭も迎撃ペースは上昇していたが、7月の急増はそれとは質的に異なる「段差」である。
しかし、2026年7月単月のスクランブル数は2025年7月の250%超に達しており、これは年初からの線形な増加ではなく、明確な急スパイクである。夏場の急増は、ロシア空軍演習、NATO拡大後の態勢を探る偵察飛行の増加、コラ半島・カリーニングラードからの爆撃機哨戒の強化と関連していると見られる。
スクランブル件数は氷山の一角に過ぎない。2026年7月には、少なくとも5つの主要な展開が同時並行で進行しており、ロシアがNATO東部戦線を複数領域で同時にテストしようとする持続的な努力を示している。
ドイツ連邦軍の第45装甲旅団(リトアニア旅団) —1955年の連邦軍創設以来初の常設海外配備— がベラルーシ国境から数キロの地点に駐屯を開始。2026年3月時点で約1,700名が展開、2026年末までに約2,000名、2027年末までに約5,000名に増強される計画。同旅団には2026年2月に戦闘大隊2個(第203戦車大隊・第122装甲歩兵大隊)が編入された。ロシア国境へのドイツ戦闘部隊の常駐は、モスクワによって「挑発行為」と非難されており、ロシア側の偵察飛行急増の一因となった可能性が高い。
3日間連続の集中したインシデント:
ルーマニアは7月27日、ロシア外交官1名を追放。2026年に入り7月26日までに、ルーマニアは18件の不正ドローン侵入を記録(2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以降の累計33件の過半数)。
2026年7月8日、NATOは数十年にわたるバルト航空警備(Baltic Air Policing)任務を完全な防空任務へと格上げすることに合意。パイロットに対し、単なる識別・護衛ではなく「脅威となる物体」を破壊する権限を付与。リトアニアのギタナス・ナウセダ大統領がNATO首脳会議後の決定を確認。この転換により、航空脅威へのより迅速かつ致命的な対応が可能となり、拡大された「イースタン・セントリー」構想の下、新たなポルトガル軍などの戦闘機部隊が増強された。
2026年7月30日、ロシア製ミサイルがポーランド領内で爆発、NATO戦闘機が緊急発進し外交危機が発生。この事件は、ノルウェーから黒海に至る東部戦線全体で航空インシデントが多発した1か月を象徴する事件であり、7月のスクランブル250%増加が統計上の異常値ではなく、組織的な圧力キャンペーンの一端であることを浮き彫りにした。
ポーランド当局者は、ロシアが鹵獲したウクライナ製ドローン(偵察型・徘徊型兵器含む)をNATO国境沿いの偽旗(false-flag)挑発行為に転用する可能性について警告。ロシアがこれらのドローンをポーランドやバルト諸国の領空に侵入させ、同盟の対応をテストし、攻撃元の帰属を曖昧にし、報復攻撃の口実とする懸念が示されている。
2026年7月のNATOスクランブル250%超増加の直接的原因は、Su-30、Tu-22M爆撃機、Su-35S戦闘機、Il-20偵察機などのロシア軍機が飛行計画・トランスポンダーなしでバルト海上を飛行した急増である。この夏の急増は、2026年初頭の上昇傾向をはるかに超える明確なスパイクであり、背景にはドイツのリトアニア常駐旅団、ルーマニアへのドローン侵入連続撃墜(3日間で撃墜3機)、NATOのバルト防空任務格上げ、ポーランドでのロシア製ミサイル着弾、さらには鹵獲ドローン偽旗作戦懸念など、複数の地政学的展開が同時に進行している。これら全体として、NATO東部戦線に対するロシアの複数領域同時テスト圧力の持続を示している。