しかし、総合知能指数で見ると評価は抑制的だ。Grok 4.5のArtificial Analysis Intelligence Indexスコアは54で、168モデル中4位。上位はClaude Fable 5(60)、Claude Opus 4.8(56)、GPT-5.5(55)が占める。 真の強みは効率性と価格にあり、入出力トークン100万あたり2ドル/6ドルと、競合プレミアムモデルの約5分の1のコストで、コーディングタスクあたりのトークン使用量は3〜4分の1で済む。
Grok 4.5が真価を発揮するのはエージェント型コーディングベンチマークだ。Terminal-Bench 2.1で83.3%(Claude Opus 4.8の78.9%を上回る)、SWE-bench Proで64.7%(GPT-5.5の58.6%を上回るがOpus 4.8の69.2%には及ばず)。 DeepSWE 1.0では62.0%で、Fable 5(66.1%)やGPT-5.5(64.3%)に続く。
独立系アナリストはGrok 4.5を「汎用リーダーではなく、強いスペシャリスト」と評し、勝利の要因は生の知能スコアではなく、価値と速度にあると指摘している。
2026年最大の驚きの一つが、マスク氏のAnthropicに対する認識の完全な逆転だ。7月10日、マスク氏はXにこう投稿した。「私はAnthropicについて明らかに間違っていた。彼らが現在明らかにAIのリーダーだ。Mythos/Fableほど優れたモデルをリリースした企業は他にない。」
この発言は、長年にわたる公開批判の末に出たものだ。2025年9月には「勝利はAnthropicにとって決してあり得る結果の一つではなかった」と書き、さらに以前には同社のモデルを「邪悪」「woke」と非難していた。 逆転の波はさらに、ライバルに対してSpaceXAIの計算リソースアクセスを武器にしないという誓約にまで及び、「それは私のスタイルではない」と述べ、自社のTeslaにおける特許オープンソース化の歴史を引き合いに出した。
ジェフリー・ヒントン氏(深層学習の父)は自身のAGIタイムラインを劇的に修正した。以前は30〜50年としていたが、2026年半ば時点での見通しは 2028〜2043年。より狭い中央推定値は 2028〜2035年 で、「10年以内の十分な可能性」を認める。また、数十年以内のAIによる人類絶滅の確率を 10〜20% と見積もっている。 ヒントン氏は、AIが5年以内に「私たちよりも優れた推論」を行う可能性があると述べている。
ベン・ゲルツェル氏(AGIの父と呼ばれる)は一貫して早期のタイムラインを主張してきた。2019年には5〜7年以内(おおよそ2024〜2026年を目標)の人間レベルのAGIを予測。 最近では、人間レベルのAGIを 2027〜2029年 と予想し、その後「わずか数年」で超知能が続くとしている。
早ければ2027年の実現も「驚かない」と述べている。
マスク氏との主な違い:マスク氏は今やAGIが 2026年末 までに個人の人間知能を超えると主張しており、これは最も早期の見方だ。ヒントン氏はより慎重ながらも、自身のタイムラインを劇的に前倒ししている(2028〜2035年)。ゲルツェル氏のタイムライン(2027〜2029年)はその中間で、マスク氏寄りだ。3者ともAGIが近いという点では一致するが、その幅は 「数ヶ月(マスク氏)」から「10年以上(ヒントン氏の上限)」 に及ぶ。
マスク氏の「超音速の津波」グラフとGrok 4.5のベンチマーク結果は、AI分野が確かに加速していることを反映している。しかしマスク氏がAGIの差し迫りを宣言するために使った同じデータが、自社のモデルが総合知能で4位に留まり、最大のライバルがリーダーであると認めざるを得なかったことも示している。AGIのタイムラインを巡る議論は決着していないが、信頼できる予測の幅は「数十年先」から「数ヶ月から数年以内」へと確実に狭まっている。