特に米国向けの伸びが顕著で、輸出台数は40%増の390万台超、金額にして11.3億米ドルとなりました。これは、中国全体の輸出が6月に27%増と2021年10月以来の高い伸びを示した流れの一部であり、AI関連機器需要とともに関税回避の駆け込み輸出が背景にあります。
かつて中国製オートバイは小型・低価格帯が中心でしたが、状況は一変しました。CFMoto(春風動力)、宗申(Zongshen)、隆鑫(Loncin) などのメーカーが独自のエンジン、電子制御システム、デザインを開発し、400cc~800cc以上の排気量帯で日本や欧州ブランドと直接競合できるようになりました。その結果、輸出額の伸び(26.3%)が輸出数量の伸び(23.2%)を上回り、単価と利益率の向上を示しています。
トランプ政権下での関税引き上げ観測は、中国の輸出業者にとって早期出荷の強いインセンティブとなりました。この「前倒し効果」はオートバイに限らず、中国の多くの輸出カテゴリーで見られました。米国向けオートバイ輸出の不均衡な増加はこの現象を如実に表しています。
低価格な電動モビリティへの世界的な需要が追い風となっています。中国の電動オートバイの受注は2026年上半期時点で7月分まで確保されており、欧州、東南アジア、中南米からの旺盛な需要が背景にあります。2026年第1四半期だけで、民間企業による電動オートバイ・モペットの輸出は前年比30%増加。主要生産拠点の重慶市では同期間の電動オートバイ輸出額が1.7億元(約2340万米ドル)に達し、23.6%増となりました。
この勢いは2025年からの流れで、2025年の中国の電動二輪車輸出は年間2670万台超、輸出額は約68.3億米ドルに達しました。2026年第1四半期には約720万台まで増加しており、前年同期比で68.2%の急増です。
米国や欧州以外の新興市場でも、中国製オートバイの購入が加速しています。最大の輸出地域はアフリカで、上半期の輸出数量は3億8314万台(前年比43.79%増)、輸出額は209.7億米ドル(同50.33%増)と急拡大しました。中南米がこれに続き、輸出数量は3億2760万台(同1.3%減)と微減したものの、輸出額は213.5億米ドル(同6.38%増)と増加しており、より高単価のモデルへのシフトがうかがえます。
ASEAN諸国向けも好調で、輸出数量は43.2%増、輸出額は55.1%増の9.8億米ドルとなりました。
中国税関総署のデータは、2026年上半期の輸出先を詳細に示しています。
| 地域 | 輸出数量(百万台) | 前年比数量変化 | 輸出額(十億米ドル) | 前年比金額変化 |
|---|---|---|---|---|
| アフリカ | 383.14 | +43.79% | 20.97 | +50.33% |
| 中南米 | 327.60 | -1.30% | 21.35 | +6.38% |
| アジア | 182.98 | +2.34% | 11.39 | +12.65% |
| 欧州 | 74.10 | -6.53% | 11.10 | +15.63% |
| 北米 | 23.69 | +10.23% | 0.97 | -17.95% |
| オセアニア | 1.89 | -1.19% | 0.25 | -0.61% |
欧州と中南米で見られる「数量減・金額増」のパターンは、中国メーカーがこれらの市場でより高価格・高利益率のオートバイを販売することに成功していることを示しており、高級化戦略の直接的な結果と言えます。
オートバイ輸出の好調は、中国貿易全体の拡大の一部です。2026年上半期の中国の対外貿易額は前年比16.9%増の25.47兆元(約3.75兆米ドル)に達しました。リチウムイオン電池と風力タービンの輸出はそれぞれ37.6%、35.6%増加し、電気自動車(EV)、電気機関車、オートバイも顕著な伸びを示しています。
「中国のオートバイ首都」として知られる広東省江門市では、2026年の最初の2ヶ月間だけでオートバイ輸出が32.4%増の32.6億元(約4.77億米ドル)に達し、同市の総輸出額の10.8%を占めました。
記録的なペースは、当面鈍化する兆しを見せていません。関税前倒し効果は年内後半の出荷を前倒しした一時的なものかもしれませんが、構造的な成長要因は持続可能と見られます。中国メーカーは価格だけでなく技術でも競争できることを実証しており、従来型・電動型ともに世界の需要は堅調です。
米国のバイヤーにとって、関税前の駆け込み輸出は中国メーカーによる在庫一掃を促し、一時的に価格を押し下げた可能性があります。この傾向が逆転するかどうかは、下半期の米中貿易政策の行方次第と言えるでしょう。