米政府高官と複数の事情に詳しい情報筋が明らかにしたところによると、移行は最長1年かけて段階的に行われ、ウクライナとの運用は中断されないと見込まれています。現司令官であるカーティス・バザード陸軍中将は2026年7月3日に退任。後任にはギヨーム・ボーペール中将が就き、米国部隊の縮小作業を指揮します。新たなNATO指揮官には、欧州またはカナダの将校が就任する見通しです。
この決定の背景には、主に3つの要因があります。
1. 米国の「欧州撤退」の流れ
国防総省はこの動きを「同盟内での負担移行」と位置づけ、戦略的に資源をより優先度の高い地域へ振り向けるためと説明しています。実際、2026年には米陸軍旅団がルーマニアとポーランドから撤退し、他のNATO司令部はすでに英国、イタリア、ドイツ、ポーランドに移譲されています。
2. トランプ政権の方針
国防費の増加を渋る国は支援の対象としないという警告が発せられる中、この決定は政権の欧州政策の見直しに沿ったものです。
3. SAG-Uは「暫定的な組織」
国防総省はSAG-Uを恒久的な米国主導のミッションではなく、あくまで過渡的な組織として設計していたと説明しています。2022年11月に設立されたSAG-Uは、侵攻開始後、急増した安全保障支援を効率的に統括するために作られたものでした。
● インテリジェンスと目標指定への影響
複数の情報筋は、米国離脱による直接的な影響として、軍事衛星偵察(衛星画像のリアルタイム提供)や精密誘導兵器の目標指定能力の低下を指摘しています。これらの分野では米国が独自の資産と専門知識を持っており、NATO当局者は「移行はインテリジェンスやその他の分野で問題を引き起こす可能性がある」と認めています。
● 重機材の輸送能力
戦車や榴弾砲などの重機材をウクライナへ迅速に輸送するには、米軍がグローバルに展開する空輸・海上輸送能力が不可欠でした。NATOの他国が同等の規模でこれを代替できるかは不透明です。
● 政治的安定性のトレードオフ
一方で、この移行は米国内の政局変動(例えば、急な支援停止)のリスクを軽減する効果も期待されています。欧州主導の司令部は、ワシントンの政策変更の影響を直接受けにくくなるからです。しかし、これは同時に、米国が「ウクライナの将来の軍事力の形を形作る」という直接的役割を失うことも意味します。
NATO当局者はこの移行を「同盟国がより大きな責任を負うもう一つの例」と評価し、「ウクライナ支援は引き続き最優先事項」と強調しています。NATO同盟国は概ねこの計画を歓迎しており、欧州がこのミッションに対してより大きな責任を負うべきだという認識が広がっています。
安全保障支援グループ・ウクライナ(SAG-U)は、2022年11月にドイツ・ヴィースバーデンの米陸軍駐屯地に設立された、アメリカ軍の統合任務部隊本部です。その任務は、ウクライナへの「長期的かつ集中的な安全保障支援のための組織的枠組み」を提供すること、具体的には、武器の輸送調整とウクライナ軍への訓練を統括することでした。
SAG-Uは米欧州軍の指揮下に置かれ、2025年4月時点で329人の要員で構成されていました。2024年12月には、NATOの「ウクライナ安全保障訓練支援ミッション(NSATU)」がSAG-Uの任務の一部を引き継ぎました。今回の指揮権移譲は、この流れをさらに推し進め、米国主導のミッションからNATO主導のミッションへの移行を事実上完成させるものと言えます。