最も衝撃的だったのは、ウクライナ防空網の「要」とされるアメリカ製パトリオットシステムがほとんど機能しなかった点です。ゼレンスキー大統領は「27発の弾道ミサイルに対し、迎撃できたのはわずか1発だった。単純に、パトリオット用の迎撃ミサイルが不足しているからだ」と述べ、同盟国に追加供与を強く訴えました。この迎撃ミサイル不足は、ロシアにさらなる攻撃を誘発していると同大統領は警告しています。
今回の攻撃で国際的に特に注目されたのが、リトアニア大使館への被害です。リトアニアのクエスティス・ブドリス外相によると、2発のミサイルが大使館のわずか10メートルと150メートルの地点に着弾しました。爆風で大使館の窓ガラスが破損し、敷地内の太陽光パネルも損傷。がれきが庭一面に散乱しましたが、幸いにも職員に負傷者は出ませんでした。
ブドリス外相は即座に「本日、ロシア大使館の代表を召喚して抗議する」と声明を発表。ウクライナのシビハ外相も大使館に軽微な損害があったことを認め、職員の安全を確認しました。NATO加盟国であるリトアニアの外交施設がロシアの攻撃で直接被害を受けたことで、同盟全体の緊張が一気に高まりました。
キーウ市内の医療現場への被害も深刻でした。市営の医療輸送機関「キーウメドスペツトランス」の施設がミサイル2発の直撃を受け、救急車5台が全焼し、市内の医療機関を支える20台の専門車両が大破しました。同施設では4棟の建物が部分的に破壊されましたが、奇跡的に従業員の死傷者は出ませんでした。
この攻撃により、キーウ市内では少なくとも9人の市民が死亡し、数十人が負傷。18棟の住宅や学校など、市民生活に直結するインフラも広範囲にわたって損壊しました。
この攻撃はウクライナ国内にとどまらず、NATO全体を揺るがす事態に発展しました。というのも、攻撃のわずか2日前(7月30日)には、ロシアのミサイルがNATO加盟国であるポーランドの領空を侵犯し、領土内で爆発する事件が起きていたからです。この時はNATOが戦闘機を緊急発進させ、ポーランド全土の防空態勢を最高レベルに引き上げる事態に発展していました。
今回のリトアニア大使館への攻撃は、NATO加盟国の外交施設が直接標的となった点で、さらに一歩踏み込んだ挑発行為と受け止められています。西側諸国はウクライナへの防空システム追加供与の加速を迫られる一方、NATOとしての対処方針の見直しが避けられない状況となっています。
ゼレンスキー大統領は改めて「迎撃ミサイルの1パッケージが、私たちの国民の命を救う」と述べ、同盟国に対し迅速な支援を求めています。