売上高の伸びは確かに力強かった。通貨変動調整後の売上高は14%増の67億4000万ユーロ(約77億ドル)に達し、ランニングシューズやサッカー用品、レトロな「オリジナルス」アパレル、W杯関連商品の需要がけん引しました。
問題は利益面でした。営業利益は5億7400万ユーロ(約6億5800万ドル)で、前年同期比わずか5%の増加にとどまり、アナリスト予想の平均約6億1600万ユーロを約8%下回りました。この「売上高の急成長」と「利益の伸び悩み」というコントラストが、売り浴びせの引き金となりました。
利益率低下の最大の原因は、マーケティング費用の急増でした。アディダスは第2四半期にマーケティング費用を前年同期比で30%増となる2億1200万ユーロ(約2億4300万ドル)追加で投入。その大半はW杯関連のキャンペーンに充てられ、四半期の総マーケティング費用は約9億2400万ユーロ(約10億5000万ドル)に達しました。
この積極投資によりW杯ジャージの売上は当初予想の4倍に達したものの、収益の上振れ分のほとんどをマーケティング費用が吸収してしまい、利益拡大の余地はほとんど残りませんでした。
アディダスは通期の売上高予想を上方修正し、「高単位数%増」から「通貨変動調整後で9~10%増」に引き上げましたが、通期の営業利益目標は約23億ユーロで据え置きました。
利益予想の上方修正を期待していた投資家は、この据え置きを「好調な売上高が利益率の改善に結びつかない」という暗黙のシグナルと受け取りました。あるアナリストは「絶対的な数字で見れば第2四半期は良い四半期だったが、高いハードルを課した市場の期待には及ばなかった」と指摘しています。
この決算発表に加え、約30年にわたりアディダスに在籍したハーム・オルマイヤーCFOが契約を更新しないことを発表しました。後任は指名されたものの、重要な局面でのリーダーシップ交代は不安材料となりました。複数のアナリストは株価急落の要因について、「オルマイヤーCFOの契約非更新と利益ミスが混ざったカクテルのようなもの」と分析しました。
17.9%の一日下落によりアディダス株は数カ月ぶりに150ユーロを割り込み、年初来では約10%の下落となりました。この出来事は古典的な投資家のパラドックスを示しています。売上高がどれだけ好調でも、その売上を生み出すコストが予想以上に利益を圧迫するなら、市場は厳しい評価を下す、ということです。
アディダスにとってW杯は、ブランドの認知度と販売数量の面で明らかに商業的成功でした。しかし投資家にとっては、その成功の代償——圧縮された利益率と上方修正されない利益見通し——があまりに大きかったのです。