そこで判明したのは、予想外の事実だった。太陽系外縁部の天体の表面を支配しているのは通常「水の氷」だが、今回得られたスペクトルからは、マグネシウムに富むフィロケイ酸塩の特徴がくっきりと現れたのである。この粘土鉱物の発見は、二つの点で極めて重要だ。
氷が一滴もなく粘土だけが存在するという状況は、これらの物質が、ずっと大きな「親天体」の内部深くに由来することを物語っている。その親天体とは、内部で熱を発生させ、水の氷を融かして粘土鉱物を生成する化学反応を起こせるほどの巨大な衛星だったのだ。
この組成上の手がかりは、海王星の衛星系にまつわる長年の謎と結びつく。海王星最大の衛星トリトンは、惑星の自転とは逆向き(逆行) の軌道を描いている。天文学者たちは何十年も前から、この異常な軌道から、トリトンは海王星のそばで生まれたのではなく、冥王星のようにカイパーベルトから重力捕獲された天体であると考えてきた。
今回のJWSTのデータは、トリトンの「到着」が、元からあった衛星系に何をもたらしたかを示す、組成面での「決定的な証拠(スモーキングガン)」となる。研究チームによれば、太陽系のごく初期にトリトンが海王星の引力に捕らえられた時、その強大な重力によって、海王星の周りを順行軌道で回っていた元々の巨大な氷の衛星群は粉々に粉砕されたという。
この大破壊の後、重力によって破片はゆっくりと再び集まった。現在私達が見ているラリッサ、ガラテア、プロテウスといった小さな内側衛星は、この破壊された天体の残骸が再集積したものであると考えられている。これらは元の衛星よりもはるかに小さいため、内部で熱を発生させて氷を融かし、粘土を新たに生成するだけの能力はない。つまり、彼らは単に、巨大な親天体の内部から破壊されずに残った粘土をそのまま受け継いだだけなのである。
これこそが、JWSTが衛星の表面に粘土を発見しながら氷を一つも見つけられなかった理由を完璧に説明する。元々の氷の地殻は衝突ではぎ取られ、内部の粘土だけが残されたのだ。
トリトン捕獲説が有力ではあるものの、研究チームは別の可能性も提示している。粘土鉱物は、冥王星と同等の大きさを持つ、分化した大型カイパーベルト天体が海王星に接近しすぎて、その重力で引き裂かれる「潮汐破壊」によってもたらされた可能性もあるという。いずれのシナリオにせよ、結論は同じだ。現在の内側衛星や環に露出している物質は、現在の姿よりもはるかに大きな天体の内部深くからもたらされたものなのである。
この発見は、海王星の衛星系に対する理解を根本から変えるものだ。内側の衛星たちは、もはや海王星と共に形成された原始的な天体ではない。それらは、海王星系全体を激変させた大事件の生存者なのである。
この物語は、巨大惑星が元々の衛星系を破壊したり、置き換えたりしてきた、太陽系外縁部で繰り返されてきたより大きなパターンの一つに過ぎない。同様のプロセスは天王星や土星の周りでも起きた可能性があり、JWSTの今回の観測は、これらの星系を調査するための強力なテンプレートを提供するものだ。
今回の発見は、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、太陽系外縁部にある小さくて暗い天体の組成を探る上で、どれほどユニークな能力を持っているかを如実に示している。赤外線の波長で観測することで、JWSTは他の望遠鏡では見えない鉱物や氷を検出し、科学者たちが数十億年前に起きた出来事を再構築することを可能にしているのだ。
カリフォルニア工科大学の研究者は次のように語る。「もし海王星に、天王星のように大きな順行衛星を持つ衛星系がかつて存在したならば、トリトンの捕獲がその星系を破壊し、現在見られる内側衛星を創り出したと言えるでしょう」。