7月28日の売りは、以下の3つの恐怖が同時に襲いかかったことで発生しました。
AI企業は驚異的な利益成長を報告する一方で、データセンターなどAIインフラへの巨額投資(発表された案件総額は約9500億ドルに上る)を約束し続けてきました。しかし、その投資が果たして見合ったリターンを生むのかという懐疑論が急浮上。投資家の間で「AI債務バブル」への警戒感が強まり、半導体関連株からの資金流出が加速しました。
米テクノロジーニュースサイト「The Information」の報道を皮切りに、中国の国策企業が最先端の深紫外線(DUV)露光装置の量産を開始したという情報が市場を駆け巡りました。この装置は先端半導体の製造に不可欠であり、オランダASMLなど既存の市場支配企業の価格決定力や市場シェアを脅かすものとして受け止められました。
また、中国のメモリーチップメーカー「長鑫存儲技術(CXMT)」の存在感が急速に増しており、サムスン電子やSKハイニックスとの競争が激化するとの見方も売りを加速させました。
AI企業がデータセンター拡大のために膨大な借り入れ(レバレッジ)を行っている実態が改めて注目され、資金調達リスクへの懸念が高まりました。投資家はAI関連の投機的なポジションを手仕舞い、リスク回避の動きが強まりました。
この三重苦により、アジアの主要半導体株は記録的な下落を記録しました。
前日の歴史的な大暴落を受け、29日(水)のアジア市場は落ち着きを取り戻し、一部で反発しました。その要因を整理します。
前日の下落が大きすぎたため、「割安感」からディップ買い(押し目買い)が入りました。特に下落率が大きかった銘柄への値ごろ感からの買い戻しが指数を押し上げました。
同日のFRB(米連邦準備制度理事会) の政策金利発表を控え、市場はその内容を慎重に見極めようとする姿勢が強まりました。一部では利下げシグナルが示されれば、資金調達環境の改善につながるとの期待もあり、売り一辺倒の地合いから一転しました。
ハイテク・半導体株から、より安定した値動きが期待できるディフェンシブ(防衛的)な大型優良株への資金シフトが発生。これにより、半導体セクター全体が引き続き売られる中でも、市場全体の指数は下支えられる構図となりました。
この直後には、米国大型ハイテク企業の決算発表が相次ぐことが予想されており、投資家はそれらを前にポジションを大きく動かすことを避け、様子見姿勢を強めました。これがパニック売りの連鎖を食い止める効果を持ちました。
ただし、この反発は限定的かつ脆弱なものでした。これは投資家のセンチメントが本格的に改善したのではなく、押し目買いやFRB・企業決算といった重要なイベントを控えた戦術的なポジショニングによる一時的な現象と見られています。「AIバブル崩壊」への懸念自体は解消されておらず、今後の市場は引き続き不安定な展開が予想されます。