株式市場は原油安と地政学リスクの低下を好感した。ダウ工業株30種平均は約260ポイント(約0.6-0.7%)上昇し、2日連続の上げとなった 。S&P500とナスダックの先物はさらに強気で、それぞれ1%、1.6%上昇。ただし実際の取引セッションは次第にまちまちになった 。買いは幅広いセクターに広がり、中東紛争の拡大やホルムズ海峡を通るエネルギー供給の途絶リスクが後退したことを市場が歓迎した格好だ 。米国のウォルツ国連大使は、ドナルド・トランプ大統領が外交的解決を追求するために軍事行動を一時停止する決定を下したと述べている 。
もっとも投資家は、この停戦が脆弱であることをすぐに織り込み始めた。同じ週末、フーシ派がサウジアラビアの石油施設を攻撃し、ウクライナはカスピ海でイランの商船を攻撃するなど、周辺の緊張は続いていたからだ 。それでも、月曜日の市場の大きな物語は「安堵」だった。
しかし7月28日火曜日、市場のムードは一変した。前日の幅広い上昇は、世界的な半導体売り崩しに取って代わられた。iShares半導体ETF(ティッカー:SOXX)は時間外取引で3%以上下落し、ナスダック先物はマイナスに転じた 。エヌビディアの株価は5%下落、アジアの半導体株はさらに打撃を受け、韓国のKOSPI指数は3カ月ぶりの安値に沈んだ 。
この売りを引き起こしたのは何か?評価額への不安と、AIブームが要求する資金の規模に対する現実的な認識の衝突である。ウォール・ストリート・ジャーナルは、エヌビディアがオハイオ州のデータセンター事業に対し、約2500億ドルの融資保証を提供する交渉を行っていると報じた 。この驚異的な数字は、AIインフラ——半導体、データセンター、エネルギー——への巨額投資が果たして見合ったリターンを生むのかという、市場の根深い不安を一気に噴出させた。中国のAI半導体分野における競争激化の報道も、さらなる圧力を加えた 。その結果、明確な二極化が生まれた。原油安とディフェンシブ銘柄に支えられたダウは比較的堅調だった一方、ハイテク株と半導体株に偏ったナスダックやアジア市場は急落した 。
7月27日から28日にかけての期間は、地政学的ショックとテクノロジー主導のショックが同時に起きた際の、クロスアセットの動きを理解する好例となった。原油先物は28日も下落を続け、イラン停戦が維持されたことからブレント原油は1バレル=87ドル近くまでさらに値を下げた 。しかし重要なのは、この原油安が債券市場の幅広い上昇にはつながらなかった点だ。米国債利回りはおおむね横ばいで推移し、市場が原油安を十分なディスインフレ要因と見なさず、FRBの政策見通しを変えるには至らなかったことを示している 。米ドルは全般的に軟調で、地政学リスク選好の低下と、FRBの金利決定を前にしたポジション調整が反映された 。
アジア市場は半導体主導のリスクオフの動きを真っ向から受け、28日は急落。一方、米国と欧州の市場は、原油安が素材や産業など非テクノロジーセクターを支えたため、相対的に善戦した 。ダウが上昇しナスダックが下落するという異常な二極化は、システミックなパニックではなく「ローテーション(セクター間の資金移動)」の様相を示していたが、テクノロジーセクターが設備投資疲れに対して脆弱であることを浮き彫りにした。
市場の混乱の背後には、週後半に控えたFRBの金融政策決定(7月29日)というタカ派的リスクが影を落としていた。複数の報道によれば、市場は利上げの確率を38%織り込んでいた。これは、より忍耐強いFRBを予想していた多くの投資家にとっては異例に高い数字だった 。サクソ銀行は今回のFOMCを「LIVE(結果が読めない)会合」と表現し、トレーダーがサプライズの可能性に緊張していたと指摘している 。この利上げリスクの高まりは、特に成長期待に敏感なテクノロジー銘柄や半導体株にとって重しとなり、慎重なムードを強めた。
経済のファンダメンタルズは不透明だった。この期間に入る前、S&P500とナスダックは2週連続で下落していた 。第2四半期の決算シーズンはまちまちのシグナルを送っており、一部セクターでは力強いスタートを切ったものの、半導体株はすでに圧力を受けて弱含んでいた 。AI投資を巡るシナリオは、根本的な問いに直面していた。半導体とデータセンターへの巨額投資はリターンを生むのか、それとも市場は過剰投資状態なのか?
7月27日から31日までの週は、決算シーズンで最も忙しい週であり、2026年で最も重要なFRB週の一つと広く認識されていた 。AI相場の行方は、この期間に結果が発表されるメガキャップ・テクノロジー企業に大きくかかっていた。これらの企業の設備投資こそが、半導体株上昇の根拠そのものだったからだ 。
アルファベット(グーグル)はすでに決算を発表しており、市場の期待を下回り、週明けのセンチメントを重くしていた 。今週の主なイベントは以下の通り。
中心的な緊張関係は明確だった。原油安と地政学的デタント(緊張緩和)は景気全体と非テクノロジーセクターにとってはプラスだが、AIへの設備投資疲れ、中国の競争、そしてタカ派なFRBリスクは、これまでブルマーケットを牽引してきたテクノロジーセクターを直撃した。これにより、ビッグテックの決算とFRBの判断が、半導体急落が単なる「ローテーション調整」で終わるのか、それともより深い調整の始まりなのかを決定づける、極めて重要な試金石が設定されたのである 。