物価見通しについては、2026年のインフレ率を従来の4.5〜5.5%から6〜7%へと大幅に引き上げた。その理由として「燃料価格の大幅な上昇がすでに発生したこと」を挙げている。実際のデータもこの傾向を裏付けており、ロシア連邦国家統計局(ロスタット)の発表によれば、6月の年間インフレ率は6.02%に加速した
。外部分析機関による中銀のマクロ経済調査(7月15日公表)では、2026年の平均政策金利予測は14.5%に引き上げられており、金融市場は今回の利下げサイクルが短期間で終わる可能性を織り込み始めている
。
燃料危機の最大の要因は、ウクライナ軍によるロシア石油インフラへの長距離ドローン攻撃の激化だ。英国フィナンシャル・タイムズ紙とポーランドの防衛コンサルタントRochan Consultingの分析によれば、2026年に入ってからの攻撃回数は少なくとも194回に上る。この攻撃により、ロシアの精油能力の推定20〜40%が停止したとされる
。主な攻撃の経過は以下の通り。
燃料不足はロシア全土に深刻な影響を及ぼしている。7月までに、ロシアの全83地域のほぼすべてでガソリン不足または供給混乱が報告された。多くのガソリンスタンドでは給油制限(配給制)が導入され、車の長蛇の列ができている
。一部の地域では路線バスの運行区間が短縮されたり、運休に追い込まれたりしている
。モスクワは4月にガソリン輸出を禁止する措置を講じたが、不足は解消されていない
。
経済への波及効果も深刻で、燃料価格の高騰は幅広いモノやサービスの価格を押し上げ、インフレを加速させている。工業生産も鈍化し、ロシア経済は「スタグフレーション」(成長停滞と物価上昇の同時進行)に陥っているとの見方が強まっている。
今回の急激な悪化は、わずか数カ月前の公式見通しからの鮮やかな転落を示している。4月時点で中銀は2026年のGDP成長率を0.5〜1.5%、インフレ率は4.5〜5.5%に減速すると予測していた。その両方が現在、大幅に下方修正された。
プーチン大統領の認識の変化も事態の深刻さを物語る。
持続するウクライナ軍の精油所ドローン攻撃、戦争関連支出の増大、そして高まるインフレ圧力——これらの複合的な要因により、ロシア経済は脆弱な状態にある。GDP成長率は事実上ゼロ、インフレは目標を大きく上回って加速しており、夏の燃料危機が全国の日常生活を直撃している。この状況は、数カ月前の公式見通しが想定していたよりもはるかに厳しいものだ。中央銀行が直面する選択肢は狭まっている。利下げを続ければさらなるインフレを招き、金利を維持または引き上げればすでに失速しかけている成長をさらに圧迫する。